実践の経営学を探究する井上達彦教授がディープテックを訪ね、ビジネスモデルをとことん問うてゆく。世界に羽ばたくイノベーションの卵に迫る。
井上:御社の事業について教えてください。
杉江:すべての人の移動を楽しくスマートにする、をミッションに掲げ、近距離モビリティのサービスと販売の2事業を展開しています。われわれはこれら2つの事業を通して、世界中のさまざまな場面での近距離用のソリューションを提供しています。
井上:歩行領域に特化したというのが一つポイントですね。そこに絞った理由は何でしょうか。
杉江:先進国を中心に高齢化が進んでいるので、歩行領域における移動が困難な方が増えています。歩行困難な方が世界で2億人いらっしゃる。
日本でいえば、免許の返納をする人が年間60万人前後いらっしゃって、その数は年々累積し、過去10年弱でも350万人程度に上ります。返納した後、移動をどうするのかが問題になっているんです。われわれはこの社会問題を、サービス、ないしはプロダクトで解決できないかと取り組んでいます。
免許返納というペインポイントに向けて
井上:WHILLさんは顧客のペインポイントと市場の広がりを示す統計とでは、どちらを先に見るのでしょうか?
杉江:顧客のペインポイントが先ですね、市場の広がりを調べるのはその後です。
起業家のタイプには2種類あると思ってまして、1つは何のトピックで起業するかを考えている人ですね。いろいろなものを調べて、チャンスがあれば起業する。もう1つは、これがしたいから起業するという人なんです。そういう人はだいたい、何も見ないですよね。僕は後者です。
井上:マーケットと対話しながら、痛み(ペイン)を拾ってプロダクトのデザインに活かすということですね。われわれは顧客洞察アプローチと呼んでいます。なかなか、できていない会社も多いように思われます。
杉江:カッコよくて、機能性が高いものを作るのが、問題を解決する方法だと考えたのです。シンプルにユーザーが求めているのは何かを考え、使ってもらったりしながら、Plan-Do-Check-Actionのサイクルを回して改良していく。
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