免許返納してもシニアが自由に動き回れる「翼」 WHILL杉江理はとことん困りごとを解消する

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井上:PDCAサイクルを回すのは難しくないですか。

杉江:われわれは、ハードとソフト両方持っているので、お客さんの声を反映して、すぐに作ってマーケットに出すことができる。これが技術的な強みになっています。

ソフトだけ、あるいはハードだけだと、片方は既製品を使わなきゃいけない。お客さんから「これを変えてほしい」と言われたときも、すぐに対応できない。

だからどちらも持つことで、ユーザーのペインや要望を、すぐ開発に落とし込んでマーケットに出すことができるんです。

自転車ともシニアカーとも違う乗り物

井上:新しくモデルSを出されたそうですが、それもカスタマーペインを起点に、ハードとソフトを連動させて開発されたのでしょうか。

WHILL杉江理さん
杉江理(すぎえ さとし)/1982年生まれ。静岡県浜松市出身。日産自動車開発本部を経て、1年間中国南京にて日本語教師に従事。その後2年間世界各地に滞在し新規プロダクト開発に携わる。2012年WHILL社を創業。近距離移動のプロダクトとサービスで世界をつなげるべく、グローバルでの事業展開および組織運営を日々進めている(WHILL提供)

杉江:その通りです。

日本において、現在、歩きづらさを感じる方がシニアの3分の1もいらっしゃるんですね。つまり約1000万人に達します。

そして2022年5月13日に道路交通法が改正され、一定の違反歴のある高齢ドライバーは、運転技能検査を受けなければならなくなりました。これに不合格だと運転免許は失効するんです。免許返納者は年間40万〜60万人いらっしゃる。

一方で、シニア向けの移動手段って限られていて、自動車の代わりになる移動手段が十分ではない。たとえば自転車だとバランスが取りづらくてふらついちゃうし、体力的にもきついです。

また、既存のシニアカーは、お客さまにとって、必ずしも積極的に乗りたいものではないようです。「昔ながらのものは乗りたくない」「自分向けのものとは思えない」という声も多く上がっていました。

井上:電動車いすは伸びていないのでしょうか。

杉江:電動車いす市場は、わずか2.5万台しかないんです。1000万人が歩きづらさを感じているにもかかわらず、その解決策としてカバーできていない。

だから、現状にない移動手段としてモデルSのプロジェクトが始まったんです。

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