井上:PDCAサイクルを回すのは難しくないですか。
杉江:われわれは、ハードとソフト両方持っているので、お客さんの声を反映して、すぐに作ってマーケットに出すことができる。これが技術的な強みになっています。
ソフトだけ、あるいはハードだけだと、片方は既製品を使わなきゃいけない。お客さんから「これを変えてほしい」と言われたときも、すぐに対応できない。
だからどちらも持つことで、ユーザーのペインや要望を、すぐ開発に落とし込んでマーケットに出すことができるんです。
自転車ともシニアカーとも違う乗り物
井上:新しくモデルSを出されたそうですが、それもカスタマーペインを起点に、ハードとソフトを連動させて開発されたのでしょうか。
杉江:その通りです。
日本において、現在、歩きづらさを感じる方がシニアの3分の1もいらっしゃるんですね。つまり約1000万人に達します。
そして2022年5月13日に道路交通法が改正され、一定の違反歴のある高齢ドライバーは、運転技能検査を受けなければならなくなりました。これに不合格だと運転免許は失効するんです。免許返納者は年間40万〜60万人いらっしゃる。
一方で、シニア向けの移動手段って限られていて、自動車の代わりになる移動手段が十分ではない。たとえば自転車だとバランスが取りづらくてふらついちゃうし、体力的にもきついです。
また、既存のシニアカーは、お客さまにとって、必ずしも積極的に乗りたいものではないようです。「昔ながらのものは乗りたくない」「自分向けのものとは思えない」という声も多く上がっていました。
井上:電動車いすは伸びていないのでしょうか。
杉江:電動車いす市場は、わずか2.5万台しかないんです。1000万人が歩きづらさを感じているにもかかわらず、その解決策としてカバーできていない。
だから、現状にない移動手段としてモデルSのプロジェクトが始まったんです。
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