実践の経営学を探究する井上達彦教授がディープテックを訪ね、ビジネスモデルをとことん問うてゆく。世界に羽ばたくイノベーションの卵に迫る。
井上:御社の事業について教えてください。
鷲谷:われわれは、ドローンによって今まで使われなかった空間を経済化します。その方法はソリューションの作り込みなのですが、お客さまと共に実証実験を繰り返し、本当のペインポイントを見極め、それに合ったドローンを開発し、量産します。
井上:今まで使われなかった空間というのが一つのポイントですね。具体例はありますか。
下水道点検ドローンに求められる飛び方
鷲谷:業界を代表する顧客企業と下水道ドローンを作りました。お話しして初めてわかったんですが、下水道って直線しかないんです。詰まらないようにカーブって絶対ない。
そして分かれるときは必ずマンホールがあって、マンホールからマンホールまでは60メートル前後しかないんです。長過ぎると詰まったときに回収できないからですね。
直接お話しするまでは何となく「曲がらなきゃいけないのかな」とか「300メートル飛ばなきゃいけないのかな」と難しく考えていました。でも実際は、60メートルだけ真っ直ぐ飛べばいいということがわかった。
それから、下水道って汚物とかあるので、回収したドローンは絶対に触りたくないんです。そのまま車両に入れて持ち帰りたくはない。だから、その場で高圧洗浄機で洗えるようにしました。
マンホールの中に入って点検するのがどれほど苦痛か。僕らの想像の100倍ぐらいつらいんですよ。ちゃんと現場に入って肌感覚で理解することが大切です。
井上:現場に入ることで、これまで見えなかったドローンの可能性が見えるようになるんですね。ドローンにコストとかリスクはないのでしょうか。
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