物流にインフラ点検、用途で違うドローンの頭脳 ACSLは顧客企業と一緒に開発の旅を楽しむ

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実践の経営学を探究する井上達彦教授がディープテックを訪ね、ビジネスモデルをとことん問うてゆく。世界に羽ばたくイノベーションの卵に迫る。

荷物を抱え、飛び立つドローン(ACSL提供)
優れた物語には共通したストーリーの構造があるという。ロード・オブ・ザ・リング、スター・ウォーズなどがそうだが、主人公がハラハラドキドキしながら冒険し、人間性を深めていく。そんな物語のもとを正せば、神話にまで遡る。
現実のビジネスは、ときにノンフィクションを超える。虚構がときに現実よりもリアリティを伝えるように、現実が虚構よりも鮮明にドラマを伝えることがあるからだ。
それを体現しているのが日本を代表するドローンメーカーのACSLの物語である。彼らは、未知の空間から価値を生み出すために顧客と共に旅をする。
持ち前の羽根を生かしてさまざまな業界を飛び回り、活気づけていく。それは、あたかもハチドリが蘭の受粉をうながして生態系を活性化させるような役割である。それを体現しているのが代表取締役CEOの鷲谷聡之さんだ。
今回は、いかにして顧客の信頼を勝ち取り、顧客と共に進化し続けられる関係を築いてきたのかについて語ってもらう。

井上:御社の事業について教えてください。

鷲谷:われわれは、ドローンによって今まで使われなかった空間を経済化します。その方法はソリューションの作り込みなのですが、お客さまと共に実証実験を繰り返し、本当のペインポイントを見極め、それに合ったドローンを開発し、量産します。

井上:今まで使われなかった空間というのが一つのポイントですね。具体例はありますか。

下水道点検ドローンに求められる飛び方

鷲谷聡之・ACSL代表取締役CEO
鷲谷聡之(わしや さとし)/2016年7月よりACSLに参画。代表取締役CEO。以前はマッキンゼー・アンド・カンパニーの日本支社およびスウェーデン支社にて、日本と欧州企業の経営改革プロジェクトに従事。早稲田大学大学院創造理工学研究科修士課程修了

鷲谷:業界を代表する顧客企業と下水道ドローンを作りました。お話しして初めてわかったんですが、下水道って直線しかないんです。詰まらないようにカーブって絶対ない。

そして分かれるときは必ずマンホールがあって、マンホールからマンホールまでは60メートル前後しかないんです。長過ぎると詰まったときに回収できないからですね。

直接お話しするまでは何となく「曲がらなきゃいけないのかな」とか「300メートル飛ばなきゃいけないのかな」と難しく考えていました。でも実際は、60メートルだけ真っ直ぐ飛べばいいということがわかった。

それから、下水道って汚物とかあるので、回収したドローンは絶対に触りたくないんです。そのまま車両に入れて持ち帰りたくはない。だから、その場で高圧洗浄機で洗えるようにしました。

マンホールの中に入って点検するのがどれほど苦痛か。僕らの想像の100倍ぐらいつらいんですよ。ちゃんと現場に入って肌感覚で理解することが大切です。

井上:現場に入ることで、これまで見えなかったドローンの可能性が見えるようになるんですね。ドローンにコストとかリスクはないのでしょうか。

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