井上:順風満帆に聞こえますが、何か課題はあるのでしょうか。
鷲谷:もちろん課題もありますよ。 1つは、翌年も同じ売り上げが立つのかという蓋然(がいぜん)性がなかなか見通せない。これはリカーリング(継続取引)の契約がないからです。
もう1つは、製品のアップデートに合わせて投資回収できるかという点です。ドローンは技術革新が早い。たとえば3年に1回は開発するとします。コンサルから量産までコンバートするまでのサイクルが3年以内であればいいのですが、それ以上かかると試作開発した機体が古くなってしまう。
極端な話をすれば6年間も投資してやっと機体が売れ始めるということでは、投資回収できないのではないかと心配されます。
井上:でも、納入した機体数が設置ベースとして増えれば、保守とか消耗品とかで安定した収益が見込めますよね。
実験フェーズをうまく乗り越える
鷲谷:おっしゃるとおりです。機体を販売した後は、定期点検やメンテナンスが必要です。部品やバッテリーを交換して、消耗品も補充しなければ危ないですよね。リカーリングの関係で安定収益が見込めます。
だからこそ台数を出すことが大切なんです。台数が出ればリカーリングの収入が増えて、投資にも回せる。機体販売にまでつながるカスタマージャーニーを意識して、実験のフェーズをうまく乗り越えなければならない。
その意味で、お客さまがずっと楽しんで体験できているかが重要なんです。実験のフェーズは、お客さまにとってもつらい時期がある。うまくいくとは限らない実験をひたすら繰り返すこともある。でも、それが達成感や成功体験につながるかもしれない。キャリアにプラスになったり、会社のブランディングに寄与するかもしれない。
お客さまと一緒に旅をしていくプロセスで、どのタイミングでプレスリリースを打つかを話し合います。プレスリリースをすると、晴れ舞台に立つことができるので会社としてはすごくハッピーになれる。一緒に素晴らしい経験を重ね、価値ある旅にしていくんです。
これが共創アプローチのビジネスモデルです。「お客さまと共に歩み、共に育つ」。そういう表現でもいいかもしれません。お客さまのペインポイントが起点となって技術開発が進められる。最初はコンサル的な役回りを演じてお手伝いしますが、やがてメーカーとして量産できるようにする。
井上:単なるドローンの購買ではなく、一緒に開発すること自体が壮大な物語であるような感じがします。世界の神話に通じる冒険を期待しています。
経営学者・井上達彦の眼
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