実践の経営学を探究する井上達彦教授がディープテックを訪ね、ビジネスモデルをとことん問うてゆく。世界に羽ばたくイノベーションの卵に迫る。
井上:御社の事業について教えてください。
津田:環境に優しいSDGs志向のバイオものづくりをやっています。合成生物学と言われるんですけど、これまで石油から生成されていたものを、微生物に作らせる。簡単に言うと、いろんな化学変換を微生物にやらせるという技術です。
バイオものづくりへの関心は、近年どんどん高まっています。石油製品で作ると、高温高圧で環境にダメージを与えますし、その廃液とかも環境によくない。しかも石油や天然ガスのエネルギー資源は海外への依存度が高い。
一方、微生物は糖があれば化合物を作ってくれる。アミノ酸、創薬、バイオプラスチックなど、かなり環境に優しく製造できる。自給率も高くなります。
昔は発酵、今は遺伝子改変技術
井上:バイオものづくりというと新しい響きがありますが、日本の伝統的な発酵食品とやっていることは同じなんでしょうか。
津田:はい、しょうゆなども目的の物をたくさん作ってくれる微生物を見つけて作られてきましたが、遺伝子改変技術が発達して、自分たちで微生物を設計できるようになったんです。
遺伝子情報は読み込みと書き出しの技術の双方があります。われわれは、ゲノム情報、DNAのシーケンサーで読むほうに特化しています。
一方、書き込むほう、すなわち編集のほうはバイオファウンドリが担っています。これまでは遺伝子を改変するといっても、1カ所か2カ所しかいじれませんでしたが、ロボットで自動的にスクリーニングすることで同時に1000カ所いじれるようになりました。たくさん編集して、いろんなところに情報を書き込める。
そのバイオファウンドリ、あるいは製薬、食品、化合物メーカーが「こういう遺伝子が欲しい」と言うんです。そのときにデータを提供します。
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