実践の経営学を探究する井上達彦教授がディープテックを訪ね、ビジネスモデルをとことん問う。世界に羽ばたくイノベーションの卵に迫る。
井上:TBMといえば石灰石を使用した素材LIMEXが有名です。
山﨑:エコノミーとエコロジーを両立させる新素材として、グローバルでのLIMEXの普及に取り組んでいます。
紙をつくるには水資源がたくさん必要ですが、LIMEXであればその使用量を大幅に削減できます。プラスチックも代替できて、石油の使用量を抑えられます。CO2の排出も削減してカーボンニュートラルに貢献できるのです。
プラスチックの設備をそのまま使える
井上:LIMEX素材は、印刷物や袋、食品容器、文具、玩具、生活雑貨、包装、ラベルなど紙製品やプラスチック製品の代替として活用されています。世界的にも普及させることができる理由は何でしょうか。
山﨑:いろいろな理由がありますが、既存のプラスチック成形設備をそのまま使えるようにしたことが大きかったと思います。原材料をLIMEXに入れ替えれば、プラスチック製品の代替が作れるようにLIMEXのレシピを開発していったんです。
プラスチックの形づけは、真空成形とか、射出整形とか、ブロー成形とか、インフレーション成形などさまざまです。それぞれの方法に合ったレシピ開発をすることで、既存の設備でLIMEXを使ってもらえるようにしました。大きな投資をせずにLIMEX製品を作れるようにしたんです。
海外の機械でもストレスなく作れるので、工場を所有せずにLIMEXの生産拠点を増やし、製造業としての活動ができる。ここがうちの技術の強みでもあるんですね。この点を評価いただいて企業価値も高まりました。
日本でも世界でも普及させるために、レシピ開発と知財開発を一生懸命やってきました。
井上:そしてこのたび、リサイクル事業を始めましたよね。大胆に手を広げている印象もありますが、緊密に関連しているのでしょうか。
山﨑:まず、カーボンニュートラルに貢献できるLIMEX素材があり、次にそれを回収・循環していくのがサーキュラーエコノミーの実現を目指した資源循環の取り組みです。
これら2つを両方走らせていくことで、サステイナビリティが実現します。だからわれわれは、リサイクル事業に着手したんです。カーボンニュートラルに、サーキュラーエコノミーを掛け合わせて相乗効果を狙いました。
実際、LIMEXを販売するときにも、今後の回収やリサイクルが話題になります。そのときに、リサイクルの構想やストーリーがなければ心配されてしまう。資源循環の仕組みまできちんと考えて、実際に動いているという姿を見せていけば信頼や期待にもつながるんですよ。
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