素材にリサイクル、身軽な経営もサステイナブル TBM山﨑敦義は「それなりの成功」に満足しない

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井上:作るときのCO2削減だけでなく、使用後のリサイクルへの意識も高まっているんですね。

TBMの山﨑敦義CEO
山﨑敦義(やまさき のぶよし)/20歳で起業後、「わかりやすく世の中の役に立つ事業をする」「グローバルに貢献する会社になる」「兆のつくビジネスをやる」、何百年も挑戦し続ける、時代の架け橋になるような会社(Times Bridge Management )をつくりたいという想いから2011年、TBMを設立(TBM提供)

山﨑:日本が主軸としているのは、廃棄物を焼却してエネルギーを生み出すという熱回収です。これは世界から見ると「リサイクルには含まれない」という声もあります。だから廃棄物を新たな製品の原料として再資源化するマテリアルリサイクルをしなければならない。

ところが、日本のマテリアルリサイクルはこれまでその多くを海外に出して処理してきました。2021年のバーゼル条約で海外での搬出処理が難しくなったので、日本政府は2030年に向けてプラスチックの再生利用を倍増させていくと表明しました。今まで熱回収していたものを、マテリアルや違う形で再生利用しなければならなくなった。

われわれはマテリアルリサイクル事業を立ち上げて、一般のプラスチックの再生利用の事業を始めました。そして、そこにLIMEXの資源循環を促進させる仕組みを組み込んだのです

「誰かがやってくれる」ではダメだと覚悟

井上:それがリサイクルプラント、すなわちインフラまで担うという構想ですね。この構想はLIMEXの開発時からあったのでしょうか。

山﨑:新素材を開発するにあたってリサイクルは意識していました。ただ、当初は「国内のインフラは整っているからそれに乗っかればいい」と思っていたんです。新素材についてもパートナーが扱ってくれると単純に考えていました。

しかし、新素材を扱うとなるといろいろな調整が必要となり、思ったようには話は進みません。逆にチャンスとしてとらえ、マテリアルリサイクルのプラントを自力で立ち上げることにしたんです。

後で誰かがやってくれるという発想では社会に浸透させていくことはできません。自分たちでやらなきゃダメだという覚悟を決めました。

TBMの横須賀リサイクル工場
横須賀のリサイクルプラントの選別ライン(TBM提供)

井上:大きな覚悟だったと思います。新素材の開発にはコストがかかるうえにインフラへの投資が加わると、資金繰りは大変だったのではないでしょうか。

山﨑:お察しの通りです。国内最大級のマテリアルリサイクルのプラントでしたからね。

「今まで素材開発をやってきた会社が、いきなりリサイクル工場を立ち上げて回せるのか」と言われました。資金もなかなか集まりにくい中で、苦労しながら大きなプラントを竣工したんです。それが横須賀工場です。

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