不眠症やがんにアプリを処方する医療の新潮流 サスメド上野太郎はデジタル治療を広げる医師

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実践の経営学を探究する井上達彦教授がディープテックを訪ね、ビジネスモデルをとことん問うてゆく。世界に羽ばたくイノベーションの卵に迫る。

不眠症の治療アプリ
アプリに患者は生活を記録し、行動を促すメッセージを受け取る(SUSMED提供)
現代の起業家は、ブラックジャックとは一味違う。
メス一本という職人芸ではなく、ブロックチェーンという最新のIT技術を用いる。制度外規格の治療で患者に負担を強いるのではなく、保険適用を勝ち取って患者に寄り添う。外から風穴をあけるのではなく、内から正統性を確保しながら関係者を巻き込んでいく。
端的に言えば、個人ではなく仕組みで医療イノベーションを起こすのである。
よく「イノベーションは周辺から」と言われる。中心に位置していては、既存の価値観やしがらみに捉われて身動きが取れなくなるからだ。確かに、破壊的イノベーションは周辺から生まれやすい。
しかし、自らをその世界に埋め込むからこそ実現するイノベーションもある。中心が起点となれば、周辺からでは得られない資源と実行力が得られる。ここでは、既存の価値観や制度の大切な部分を尊重しつつ、時代の変化に対応するのがポイントだ。
医師でありながらサスメド株式会社を創業した上野太郎さんは、そのヒントを与えてくれる。

井上:御社は医療機器としてのアプリ、いわゆるプログラム医療機器を開発していらっしゃいますね。医療機器承認された先駆的な事例の一つだと伺っています。

睡眠薬か、診療に数十分か、ではなく

上野:2014年の薬機法の改正の時点で、アプリ自体が治療を目的とする医療機器として認められるようになりました。アプリを使って患者さんの病気の治療をするという医療機器です。私たちも、不眠症の治療用アプリを開発し、承認をいただきました。

不眠症に対しては、認知行動療法が推奨されているのですが、睡眠薬が処方されることが多いんです。待合室で患者さんが列をなしている状況で、1人の患者さんの診療に数十分の時間を費やすのが現実的ではないからです。

しかしアプリであれば、睡眠薬に頼らずに短い診療時間でも、認知行動療法が実現できる。

井上:それは素晴らしいですね。他にどのようなものを開発されているのでしょうか。

上野:複数開発しています。具体的には、がん患者さん向けのもの、腎臓病の患者さん向けのもの、あとは耳鼻科の領域での治療アプリなども開発し始めています。

井上:がん患者さん向けのアプリというのは、どのようなものなのでしょうか。

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