不眠症やがんにアプリを処方する医療の新潮流 サスメド上野太郎はデジタル治療を広げる医師

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井上:だから医療機器として承認されて保険適用されるわけですね。医師からの処方ということで信頼が生まれ、患者の行動変容につながりそうです。

上野:おっしゃる通りで、そこはすごく大切です。結局、誰でもダウンロードできるヘルスケアのアプリと、自分の主治医である医者から処方されたものとでは、まったく意味合いが違います。自分の状況が主治医の先生に共有されるとなると、ちゃんと取り組もうという意識が芽生えます。

アプリを取り巻く関係性がある環境で治療していくのがポイントです。

ヘルスケアというと「あれば便利」という域を出ません。一方、医療というのは病気で困っている患者さんから求められるものです。マーケティングに膨大なコストをかける必要もない。自分たちらしく医療でやっていこうと決めたんです。

持続可能な医療をデジタル技術で

井上:持続可能な医療という御社の理念にも合致していますね。

上野:会社を設立した当時、私は35歳ぐらいでした。当時、同世代の医療従事者の間では「今の医療制度は持続しえないよね」というのが共通認識だったんです。

周りの医師と話す中で、持続可能な医療についての問題意識が高まり、デジタル技術を通じて持続可能な医療に貢献するというアイデアを思いつきました。サステナブルメディスンというものをビジョンに掲げ、それを会社名として「サスメド」を設立しました。

井上:もう1つの事業の柱として、医薬品や医療機器の治験を効率化するサービスを行っているそうですが、これを始めたきっかけは何でしょうか。

上野:私たちは不眠症の治療用アプリを開発して、実際に治験をやろうと思ったのですが、とても大変でした。

今の時代、体力のある製薬会社さんでも、治験の受託をしているCROに手伝ってもらっています。私たちもCROに見積もりを出してもらいましたが、億円単位の見積もりがポンと出てきた。中身をちょっと見てみると、ほとんどが人件費で驚きました。

次ページ治験に莫大な費用がかかる理由
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