天空から地上へデータ覇権をエッジAIで取り戻す ArchiTekのいいとこ取りチップはデバイスの脳

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井上:そのチップは、何か特別な性能が求められそうですね。

高田:リアルタイム性能、低消費電力、低コスト、柔軟性。この4つの要件を満たすものがエッジコンピューティングに最適です。

われわれのチップは、性能について言えば汎用CPUと比較して1/20の処理時間を実現しています。消費電力は汎用GPUと比較して10倍以上の電力効率化。そして、コストについても、産業用PCに世界有数のGPUを組み合わせたユニットの、わずか40分の1です。

しかし、本当の強みは柔軟性なんです。

世の中には2つのタイプのチップがあって、1つが低コスト・低電力で小さいんだけど「これしかできない」というタイプのチップです。

前職でテレビに積むチップを開発していたのですが、青い空を青く見せるとか、肌色をきれいに見せるとかそういう回路です。家電のものはきちきちに作るので小さいんですよね。そして低コスト、低電力。でもその機能しか果たせない。

コストと柔軟性のいいとこ取り

もう1つがその真逆のもので、NVIDIAさんのGPUです。ソフトウェアでプロセッサーを駆動するので命令次第で何でもできます。

例えば、1000の命令を要する処理があると、1個のプロセッサーに1000回の命令をかけて処理するのではなく、1000個のプロセッサーを積んで1つの命令で一気に処理しようという発想です。時間は早いのですが、ユニットが大きくなってしまう。消費電力やコストも高くなりますね。

われわれのチップは両方のいいとこ取りをしています。AIとか画像処理、音声処理の必ず使うべき部品を固定してつなげるのではなくて、つなぎ替えられるようにする。部品を厳選して積んでプログラムでつなぎ方を切り替えると、ソフトウェアを動かすだけでいろいろなことができる。

いいとこ取りなので、低電力で柔軟性があるチップです。インテルの人も「これは珍しい」と言ってくれました。

井上:これがそのチップですか。随分小さいんですね。

指先サイズのチップ(ArchiT提供)
指先サイズのチップ(ArchiTek提供)

高田:NVIDIAのユニットだと手のひらサイズになるのですが、われわれのものは指先サイズです。これぐらい小さくないと、街中のデバイスに付けられない。指先サイズであれば、監視カメラに付けたり、照明に埋め込んだり、工場だと、組み立てロボットに先っぽに付けたりできる。

小さくできるのには理由があるんです。2ワットの壁というのがありまして、消費電力がそれ以上になると熱を帯びるので、冷却ファンなどの補器類が必要になる。コストもかかる。製品寿命も短くなる。

一方、われわれのチップは、2ワットの壁を越えないように、ぎりぎりの線まで性能を高めています。だから、エッジプロセッサーとして最適なんです。

井上:ものすごい技術ですね。これ、ビジネスとして成功させるためにどのように広げていくのでしょうか。

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