「昼顔」から9年、「あなして」が注目を集める必然 なぜ今、セックスレスドラマが量産されるのか

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西谷監督はこれまで「白い巨塔」「エンジン」「ガリレオ」「任侠ヘルパー」「刑事ゆがみ」「モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―」などを手がけてきた映像の美しさに定評がある演出家。不倫というテーマでは9年前の2014年に「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」を手がけましたが、このときも不倫の生々しさを映像の美しさで中和させていました。

ドラマだから描けるファンタジー

特筆すべきは、劇中の不倫を背徳や妖艶などで刺激を与えるアプローチではなく、“ドラマだから描けるラブ・ファンタジー(恋の空想・幻想)のようなもの”として見せていること。「昼顔」も「あなたがしてくれなくても」も映像が美しいから視聴者は「リアルなんだけど、どこか遠い世界の話にも見える」と感じるなど、見やすくなっているのです。

この「映像が美しい」は、イコール「作品としての質が高い」ということ。当作は決してセックスレスという強烈なテーマを扱っただけの作品ではなく、映像の質が高いからこそ支持を集めているところもあるのでしょう。

ちなみに西谷監督だけでなく、プロデュースの三竿玲子さん、演出の高野舞さん、音楽の菅野祐悟さんなども「昼顔」の制作チームだけに、両作が比較されるのは自然な流れ。ただ、「昼顔」の放送後に芸能人の不倫騒動が相次いで世間を騒がせ、今なお「不倫」と聞いただけで懲罰感情を持つ人が少なくありません。

その意味で「あなたがしてくれなくても」は「昼顔」ほど、映像の美しさやラブ・ファンタジーを思わせる世界観を前面に出さず、より心の動きにスポットを当てているところが見受けられます。つまり、「不倫を『昼顔』のときほど美しく描かないほうが現在の世の中にフィットするのではないか」「ほどよいラブ・ファンタジーにとどめて、その分、当事者心理にスポットを当てよう」というプロデュース方針ではないでしょうか。

今春の最大勢力は、「風間公親 ―教場0―」(フジテレビ系)、「ラストマン―全盲の捜査官―」(TBS系)、「ケイジとケンジ、時々ハンジ。」(テレビ朝日系)など1話完結型の刑事ドラマ。それだけに連ドラらしい連続性があり、全話をかけて主要人物の心理状態を描く「あなたがしてくれなくても」は、少なくとも話題性や反響の大きさでは最後までトップを走り続けるでしょう。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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