「今日何を食べたいのか」腸が操っている驚く事実 腸内細菌が人の食べ物に対する欲求に影響与える

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男性の読者だったら、よくご存じかもしれませんが、毎朝、駅や会社の男性の個室トイレは満室状態が続いています。個室トイレの数が少ないわけではありません。実は男性は腸が弱く、ストレスの影響が腸に出ることが多いのです。腸内細菌の種類も性別で違いがあり、その反応も性別によって変わります。

うんちの状態(便性状)別に腸内細菌叢解析結果を見てみましょう。便性状の分類には、視覚的に便性状を7段階に分類するブリストル便性状スコア(BristolStool FormScore; BSFS)がよく使われています。

これは、Type1(兎糞状の硬便)、Type2(ソーセージ状の硬便)、Type3(表面にヒビ割れを伴うソーセージ状のやや硬い便)、Type4(表面がなめらかなソーセージ状便:普通便)、Type5(やや軟らかい半分固形の便)、Type6(泥状便・小片便)、Type7(水様便)のように分類されます。これらの便性状は腸管通過時間を反映し、便回数頻度と合わせて腸管運動機能を推定するのに役立つ指標となっています。

うんちの状態を見れば生活の質がわかる

実は、うんちの状態が生活の質(QOL)を示しているという研究もあります。Type4のQOLが最も高く、硬い便になるに従いQOLが低下するだけでなく、軟かい便になるに従い同様にQOLは低下するようです。そこで私たちは、277名の日本人健常者の腸内細菌叢を解析し、BSFSとの関連について報告しました。

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興味深いことに菌叢構成の多様性(β多様性)について男女差を認め、属レベルでの解析では食物繊維を分解する能力が高いプレボテラ属、メガモナス属、潰瘍性大腸炎や大腸がんの原因菌とされるフソバクテリウム属、ビールの品質を腐敗させるメガスファエラ属が男性に優位な菌であり、ビフィズス菌で有名なビフィドバクテリウム属、ルミノコッテカス属、ムチンを好むアッカーマンシア属が女性に優位な菌でした。

さらに、腸内細菌叢とBSFS との関連を解析した結果、多様性(細菌叢の豊富さ、均等度)については、男女ともに便性状において明らかな差異はみられませんでした。

しかし、属レベルの腸内細菌叢解析結果では、男性の軟便傾向の便(BSFS Type5、Typ6)でフソバクテリウム属、オシロスピラ属が有意に増加し、硬便傾向の便(BSFS Type1、Type2)でオシロスピラ属が増加していたのです。ビフィドバクテリウム属は平均して10%を占める日本人女性に多い特徴的善玉菌で、全体で見ても便秘傾向の便(BSFS Type1、Type2)で増加しており、その傾向は女性でより顕著という結果でした。

内藤 裕二

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京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学。昭和58年京都府立医科大学卒業。平成13年米国ルイジアナ州立大学医学部分子細胞生理学教室客員教授、平成21年京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学准教授。平成27年より同学附属病院内視鏡・超音波診療部部長。

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