5類と円安で加速「オーバーツーリズムの脅威」 SDGsは適切に行えば「コスト削減」につながる

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費用がほとんどかからないにもかかわらず、こうしたアンケートを実施している自治体はあまり見られないという。「行政やDMOは、国別(出発地別)の宿泊客数などの定量データは持っているが、肝心のその裏にある定性情報を把握していないことが多く、もったいない」(村山氏)。

株式会社やまとごころ代表でインバウンド戦略アドバイザーの村山慶輔氏(筆者撮影)

ほかに、地方誘客促進に関連して特筆すべき取り組みとして、奈良県の明日香村が行っている「あすかオーナー制度」なども面白いという。棚田やミカンの木など、さまざまなもののオーナーを募集し、実際に農作業などを行ってもらうという取り組みだ。棚田で苗代づくりから収穫まで、地元インストラクターの指導を受け、自分の区画で米づくりが体験できるコースや、一部の作業のみ体験できるお手軽コースなどもある。オーナーになれば、明日香村に足繁く通うことになり、関係人口(定住者でも通りすがりでもない地域と多様に関わる人口)が増え、労働力不足への対策や景観保護にも役立つ。

観光を通じて何を守るべきなのか

以上、「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」の3つのキーワードについて、具体的に何をすべきかを論じてきたが、村山氏は「これらのことよりも、もっと前にやるべきことがある」と言う。どのようなことだろうか。

「観光産業は地域の歴史や文化の蓄積の上に成り立っており、そのベースの部分に、『歴史や文化を継承する』『地域をより良くする』といった考えがなければ、持続的に商売を行うことは不可能だ。そこで、まずは自分たちの地域では、観光を通じて何を大切にすべきか、何を守るべきなのかを、きちんとディスカッションして明確にし、それを外から訪れる観光客にも伝えることが大事だ」

例を挙げると、金沢市では「金沢SDGsツーリズム」というサイトで、旅行者向けに「金沢の旅をもっと楽しくするために」と題して8つのメッセージを伝えている。「金沢の自然・文化・歴史について知ってください。」「伝統工芸やアートに親しんでください。」「金沢の食を楽しんでください。」「金澤町家に泊まってみませんか。」といったものだ。

こうしたメッセージを発信することを通じて、自分たちがどういう地域になりたいのか、また、どういったお客さんに来てほしいのかが明確になる。そうすれば、その次のステップとして何を行うべきかも、自ずと見えてくるのである。

森川 天喜 旅行・鉄道作家、ジャーナリスト

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もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など

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