「新しいウクライナ」がEUの命運を左右する

一歩間違えればEUは地に落ちる

EUの構成国はそれぞれに経済的な制約があり、追加で2国間援助を検討する意欲はない。ゆえにウクライナは地獄へと続く穴の縁でぐらつき続けている。国内では急進的な改革プログラムを推進する動きが強くなっている。

欧州には避難民が押し寄せ、その数は現実的に推定すれば2000万人と考えられる。多くの人々は、2度目の冷戦の始まりだと予想している。プーチンが欧州で多くの友人を作ることで、ロシアに対する制裁を解除できるかもしれない。

EUは新しいウクライナに敗北する

これは欧州にとって最悪の結果だ。実現すれば域内がバラバラになり、ロシアと米国がその影響力を互いに広め合う戦場となる。EUは世界における政治力を失うだろう。

実現する可能性のより高そうなシナリオを挙げるなら、欧州はウクライナに点滴を打つことで何とか切り抜けようとし、ウクライナは崩壊こそしないものの、寡頭政治における支配者の主張が再開され、新しいウクライナは以前のウクライナに似てくる、というものだ。

プーチンはこの状況を完全崩壊と見なしてほぼ満足するだろう。しかし彼の勝利が確定しているとはいえない。なぜならこのシナリオだと第2の冷戦が起き、旧ソビエト連邦が敗北を喫したときと同様、ロシアが負ける可能性もあるからだ。石油1バレルを100ドルで買わなければならないため、ロシアの外貨準備金は2~3年のうちに底を突くだろう。

私が近著『欧州連合の悲劇』で述べたシナリオでは、EUは新しいウクライナに敗北する。ウクライナを防衛するというEUの基準方針は放棄され、EUは自らを守るため大量の資金を使わなければならなくなるだろう。その金額は、新しいウクライナの成功を援助するために必要な資金よりも多くなる。

ただし、もっと希望的なシナリオもある。新しいウクライナが生き残り、自己防衛を決定する。1国ではロシアの軍事力にかなわないから、同盟国が「いくら使ってでも」支援することを決断し、ロシアとの軍事衝突を起こすか、ミンスク停戦協定を反故にする、というものだ。

これはウクライナを助けるだけでなく、EUが失った価値観と主義を取り戻すことも促すだろう。そして私はこのシナリオを支持している。

週刊東洋経済2015年4月25日号

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