ホンダはなぜ「ニュルFF最速」に挑戦するのか 走り以上に「最速の称号」が重要であるワケ
ニュルブルクリンク北コースは、日欧のメーカーにとっての共通テストコースとなっているわけだ。だから、この地で“1番速い”というのは重要だ。
もしも、ホンダのお膝元である鈴鹿サーキットでFF最速をうたっても、「ほかのメーカーが走らせていないところで1番と言われても……」と言われるのがオチ。
だから、各社が一様に走らせるニュルで最速となることが、重要なのだ。それは、性能向上のためだけでなく、高性能であることのアピールになり、販売上のバリューにつながる。
実際に、今回はシビックタイプRがFF最速をうたったが、過去にはルノー「メガーヌRS」やフォルクスワーゲン「ゴルフGTI」が、同様にFF最速を発表している。互いにラップタイムを更新しあって、性能向上をアピールしているのだ。
もちろん、”ニュル最速”はFFモデルだけでなく、さまざまなカテゴリーで行われている。たとえば、BEVならポルシェ「タイカン」が、7分33秒のラップタイムを樹立。今回のシビックタイプRを上回る速さだ。
ユニークなところでは、2008年に日産が「燃料電池車(FCEV)の最速ラップを記録」を発表している。
そのときのタイムは11分58秒。シビックタイプRやタイカンには遠くおよばないが、そのときのクルマは「X-TRAIL FCV」。SUVベースのFCEVで、最高出力は90kW(120馬力)にすぎないから、相当に頑張った記録といえるだろう。
“ニュル最速”の称号が必要なワケ
そうした“最速ラップ”を各メーカーが求めるのは、やはりそれだけ価値が高いからだろう。宝石に、たしかな鑑定書が付いているようなものになるためだ。
特に、シビックタイプRのような乗用セダンをベースにするモデルほど、この鑑定書の重要度が増してくる。なぜなら、真の実力を知らない人に、シビックの名前から「量産セダンだからたいしたことない」と勘違いされかねないからだ。
それは、ライバルであるメガーヌRSやゴルフGTIも同じ。もちろん、実車を見て触れて走らせてみれば、そんな鑑定書がなくても、その実力は理解されるだろう。
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