横浜みなとみらいで進む「オフィス離れ」の超深刻 割安な「品川・汐留・晴海」に企業需要奪われる

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ところが、空室が増えたことで、都心ではテナントを呼び込むため賃料水準を引き下げるオフィスビルが後を絶たない。三鬼商事によれば、2023年3月末時点の東京都港区のオフィスビルでさえも1坪当たりの平均賃料が2万円を下回っている。対して、みなとみらい21地区は同2万円超もあり、依然として高水準だ。

「オフィス需要が伸び悩む中、品川・汐留・晴海をはじめとする東京湾岸エリアなど、賃料水準を落とした都心の大型ビルにオフィス需要を奪われている」と、不動産サービス大手のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの熊谷真理ヘッド・オブ・リサーチ&コンサルティングは分析する

賃貸をあきらめ自社で使う例も

テナントへの賃貸をあきらめて、自社利用するオフィスビルも出てきた。LG Holdings Japanによる大型オフィスビル「LG YOKOHAMA INNOVATION CENTER」(延べ床面積は約1万坪)は2022年3月に稼働した物件だ。2023年4月末時点でも空室が残っており、大半はLGが使用している。

リーシングが上手く進まず、ビルの大半をLG自身が使用している(記者撮影)

「当初はオフィスの半分以上を賃貸して収益を稼ぐつもりだったが、リーシングが上手く進まず、結局は一部フロアも自分たちで使わざるを得なくなったようだ。賃料は一時期、1坪当たり2万円を割った」と、前出のオフィス仲介幹部は明かす。

テレワークの浸透などでオフィス需要が伸び悩む中、大型ビルが大量供給されるみなとみらい21地区の苦戦は当面続きそうだ。

佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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