「数学嫌い」多い日本とインドの入試の決定的な差 世界的な経営者を輩出するインド工科大学の受験

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上の解答を見ていただくと気付かれると思うが、いわゆる順列記号Pや組合せ記号Cを用いていない。筆者は長い数学教育人生から思うことの1つに、「順列・組合せの問題の解答にはPやCを書かないといけない」と勘違いしている人が非常に多くいることである。

イチ、ニ、サン、シ……と1つずつ数えることを忘れているかのような答案を多数見てきただけに、あえてPやCを用いないで、小中学生にもわかるような説明を述べた。実は、JEE Advancedで出題された順列・組合せの問題では、上の問題のように、PやCを用いないで解ける問題が少なくない特徴を感じるだけに共感を覚える。

日本の数学教育に足りない要素

IITの入試に出題され続けている微分方程式や3行3列の行列についても、日本の数学教育を顧みて一言述べておきたい。かつては、変数分離形に限定した微分方程式は高校数学IIIの教科書できちんと取り上げられていた。しかし現在では、発展的学習という中途半端な扱いである。およそ自然現象を記述するときは微分方程式を用いるのが普通であるので、かつてのような扱いに復活することを期待したい。

かつては、平面の変換を扱う2行2列の行列が高校数学で扱われていたが、現在では扱われていない。最近、いわゆるデータサイエンスが注目され、その方面の学部・学科が大学で続々新設されているが、教員人事構成を見ると、基礎となる数学の教育は軽視されているようにしか思えない。データサイエンスを学ぶために必須の数学として微分積分もあるが、いわゆる多変量解析の基礎としての(行列を扱う)線形代数は最も重要な基礎であると考える。

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