運賃無料イベントで見えた地域公共交通の「未来」 とさでん交通「無料・ワンコイン施策」成果は?

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無料デーの仕組みとしては、高知市が利用者の運賃相当額をとさでん交通に補助金として交付する形がとられ、とさでん交通、利用者の双方にデメリットを生じさせない形が取られている。それまで、東急池上線や一畑電車などで1日限りの無料デーが実施されたことはあったが、計20日間の長期間にわたって行われた取り組みは全国的にも珍しい。

アンケートからは、電車やバスに久しぶりに乗ったという人が多かったことが明らかになり「電車やバスに乗ってプチ旅行が出来て楽しかった」「ランチでビールが飲めたのがよかった」という好意的な感想も寄せられた。利用者については、前年2020年度と比較して全体で約2.5倍の増加となった。

一方で、電車については遅延が生じ行先変更をせざるをえなくなったほか、バスでも定員を超える利用者があり続行便を出さざるをえなくなるなど、現場では混乱もあったようだ。

2度目は「日祝電車・バス等運賃ワンコインデー」

こうした無料デーの成功により、翌2022年には、新たな取り組みが始まった。同年11月から2023年1月まで実施された電車とバスのワンコインデーだ。

インタビューに答える高知市市民協働部交通戦略課課長の出口忠彦氏(写真:高知市役所)

このワンコインデーについては、高知市内でのICカード乗車券「ですか」の普及拡大を目的としており、運賃を現金精算の場合は100円とした一方で、「ですか」精算の場合は10円に設定。こうした取り組みで「ですか」の普及を目指した理由について、高知市市民協働部交通戦略課課長の出口忠彦氏は、利用者の利便性向上に加え「事業者側にも、利用データの分析が可能になるだけでなく、遅延解消や両替の手間が省け危険防止につながるなど多くのメリットがあるため」と説明する。

とさでん交通では、キャンペーンに先立ち、9月1日より、高知市民を対象に100円のチャージ金額が付与された「ですか」2万枚の無料配布を実施。申し込みは、開始日からわずか2日間で9000枚に達し、11月7日に上限の2万枚を達成した。とさでん交通経営企画室長の水田正彦氏は「当初、2万枚もの申し込みは来ないという想定もあったが、開始から2日で、9000枚に達したことに驚愕した。同時に2万枚到達が確信へと変わり、早い段階で目標を達成することができた」と振り返る。

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