300人待ち「猫専用アパート」人も幸せな4つの工夫 家の環境が「不幸な猫」を生み出してしまう

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そのようななかで、「猫にとってどのような環境が幸せなのか?」を徹底的に考え抜き、工夫を凝らしたアパートがあります。

東京都杉並区にある賃貸アパート「Gatos Apartment」がそれにあたります。

私は、たった1つ、強力な個性があり、お客さんを惹きつける魅力がある物件を「一芸物件」と呼んでいるのですが、まさに「Gatos Apartment」は「一芸物件」と言えるでしょう。

実際、「Gatos Apartment」とオーナーである木津さんがプロデュースした6棟の猫専用物件で、ウェイティング・リストに空室待ちの登録をしている人は300人以上となっています。

はじまりは野良猫の保護から

そんな「Gatos Apartment」のはじまりは2005年、オーナーである木津イチロウさんがパートナーとともにあるテラスハウスに引っ越したことにはじまります。引っ越したその日から、前の住人が餌付けしていたのでしょう、庭に野良猫が訪れるようになりました。

木津さんは、猫を飼うほどの猫好きというわけではなかったそうですが、かわいそうでエサを与えるようになると(現在はもちろん野良猫の餌付けに関するルールは熟知しておられます)、チーと呼ぶようになっていたその猫が、ある日、子猫を連れてやってきたのです。

見ると、その子は目ヤニだらけで目が見えていない様子。木津さんにはチーが「助けてください」と言っているように感じられ、あわてて病院に連れていきました。その後、2度の手術を受けさせ、その子は目が見えるようになりました。

木津さんは当初、2匹を外に戻すつもりでしたが、獣医の先生から「この猫たちをどうするのですか?」と聞かれたとき、とっさに「飼います!」と答え、思いがけなく飼うことになってしまいました。

それでも、ウーと名づけたその子が元気になったら2匹は外に戻すつもりでした。

というのは、木津さんのテラスハウスはペット不可だったのです。ウーが元気になるまでの間、母親のチーとともにテラスハウスの室内に保護することとしました。

ところが、それからほどないある日、なんとチーが寝室で3匹の子猫を出産したのです。期せずして木津さんは5匹の猫をかくまうこととなり、さすがにペットの飼える物件に転居することを決意したのです。

しかしながら、物件探しを始めて知ったのは、世の中にペット可物件はあっても、ほんとうの意味で猫と快適に共生できる物件はないということでした。

次ページ「ペット専用物件」は実質「犬専用物件」だった
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