売り上げも利益もさらけ出す「透明書店」の正体 クラウドSaaSのフリーが異色書店に託した役割
また、社員が1000人規模に膨らんだ本社ではなかなか試せなくなっていた自社サービスを、透明書店では自らが課金して導入。仕入れ、在庫管理などで自社プロダクトを活用しながら課題点を見出し、そのフィードバックも行う。
「うまくいったことだけでなく、うまくいかなかったことを出すのにも価値がある。お金のデータがつながって、経営がどんどん可視化されていくような世界を作りたい」(透明書店共同代表を務めるフリーの岡田悠ブランドマネージャー)
実践の舞台に書店を選んだのは、IT企業であるフリーの通常業務の中では気づけない視点があるのでは、という期待からだった。
スモールビジネス(個人事業主・中小企業)において、小売業は他業種よりも割合が高いのが特徴だ。さらに書店の多くの業務は、いまだ紙やFAXでやりとりが行われる。フリーが得意とするテクノロジーを駆使して業務を改善し、それによって別の業務に充てられる時間を創出できる余地は大きい。
出版業界の足元の動向を見ると、大型書店が減少している一方、独立系書店の業界団体であるアメリカ書店協会によると、アメリカで加盟する書店数は2年前の1689店(2020年7月)から、直近では2561店(2022年7月)へと増加している。出版不況が叫ばれる中でも、デジタル活用などの工夫次第で、国内でも成功事例を見せられる可能性はあるかもしれない。
ChatGPTを搭載した「くらげ」が副店長
フリーは透明書店を新しい技術の「実験場」としても活用する予定だ。
透明書店に入店すると、すぐ右手にあるモニター上の「くらげ」が出迎えてくれる。このくらげは、アメリカのOpenAIが提供するChatGPTのAPIをベースに、その日の店内在庫などを学習させた独自のAIが使用されている。
フリーでAIプロダクトマネージャーを務める木佐森慶一氏によれば、このくらげは「副店長的な役割」を担っているという。例えば来店客が「今売れている本は何?」などと質問すると、在庫データと連携した対話型AIを通じて、おすすめの本を紹介してくれる。
数千冊のなかから対話形式で欲しい本を掘り下げられれば、偶発的な出会いをもたらすこともできる。
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