売り上げも利益もさらけ出す「透明書店」の正体 クラウドSaaSのフリーが異色書店に託した役割
東京・蔵前の閑静な町の一角に4月21日、小さな本屋がひっそりと誕生した。22坪の店内には、約3000冊の本が所狭しと並んでいる。
「透明」「自由」などとユニークなジャンルで分けられた棚に並ぶ書物は、ビジネス本からエッセイ、漫画まで幅広い。小さな出版社の刊行本や、「リトルプレス」(個人などにより制作され、流通までを自ら手掛ける出版物)も、1000冊ほど揃う。
本屋の名は「透明書店」。運営しているのは、バックオフィス向けのSaaSで知られるfreee(フリー)が100%出資する、透明書店株式会社だ。フリーは2012年の創業以来、「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げ、会計ソフトや人事労務ソフトなど、クラウド統合型の経営プラットフォームを多くの中小企業に導入してきた。
しかしなぜ今、まったく業種の異なる書店を開いたのだろうか。
毎月の売り上げや利益を店内で公開
もともとフリーは、マーケティングだけでなくブランディングの一環として、社外に向けてさまざまな施策を展開してきた。
2020年には「スモールビジネス映画祭」と銘打ち、スモールビジネスをフィーチャーした短編映画を作りオンライン上で配信。2021年には出版レーベル「freee出版」を立ち上げ、起業を考えている人にフォーカスした雑誌「起業時代」も創刊している。
ただ、今回は単発の企画ではなく、常設店舗として継続的に発信する事業という点で一味違う。
透明書店の共同代表である岩見俊介氏は「われわれ(フリー)のミッションにより寄り添ったブランディングはなんだろうと考えたときに、単にフィーチャーするだけでなく、自らスモールビジネスをするのがいいのではないかと思い、プロジェクトが始動した」と話す。
「透明書店」という店名には、スモールビジネスの営み自体をオープンにしたいという意味合いが込められている。例えば毎月の売り上げや支出、利益といった財務状況のほか、新規事業の経過、経営の体験談などを、店頭やnoteなどで公開していく予定だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら