イオンが身構える「PB生産者表示」の衝撃 「トップバリュ」など大手PBの実態が明るみに

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そもそもPBが日本に導入されたのは、強い円を背景に大手スーパーマーケットがビールなどを輸入販売したのがきっかけだった。有名なのがダイエーの創始者・中内功さん。価格破壊の代名詞としてPBを活用した。

中内さんはかつて「PB商品は、日本の物価を2分の1にするためのひとつの手段だ」と語り、メーカーに対しても工場の稼働率向上には流通業者のPB商品を生産するほうがいいと説いた。中内さんはPB商品について、「製造者名を表示すべきと思わない」「企業には企業秘密がある」とはっきり述べていた。

基本的にPBは、中内さんが言ったようにメーカーの生産余力を活かした点に競争力があったし、また流通業者が在庫を買い取るためにメーカーにもリスクが少なかった。加えてマージンや宣伝広告費などが削減できるため、小売店に安価に提供できた。

同時にPBを生産する側からすれば、諸刃の剣だった。生産数が安定し、かつ在庫リスクも減る一方、それは自社がPB商品を卸している特定の小売業者以外を敵に回すことでもあった。さらに小売店の力が大きくなるにつれて、メーカー独自で革新的な商品開発ができなくなっていった。

消費者サイドと、販売者サイドに起きること

そこでふたたび食品表示法と、それが課す生産者表示に話を戻そう。この生産者表示は何をもたらすだろうか。

まずブラックジョーク。生産者名が同じ類似のPB商品が2つあったとしよう。たとえば小売店Aと小売店Bが、名前の違う商品を販売していて、生産者表示によって実は同一メーカーが同一品を納品していたとわかった場合だ。

小売店Aと小売店Bの売り上げに明確な差があったとすれば、それは小売店のマーケティング優劣を残酷なほど示すだろう。笑い話ではなく、こういう例は実際に多数散見されるはずだ。生産者名が公開されたとき、生産者が同じで、かつほとんど栄養素なども同じであれば、それは同一商品だとしか考えられない。そのとき小売店各社は何を思うだろうか。

イオンのPBトップバリュ(写真は2012年撮影)

加えて私たち消費者にそもそも商品とは何かという根源的な疑問を呈するだろう。はたして、大手小売業者が販売し、大手食品メーカーが引き受け、その下請け工場が生産するPBがあったとする(これはあくまで例だ)。

そのとき、PB商品は、企画した大手小売業者のものか、それとも具体化させた大手食品メーカーのものか、それともモノづくりを担った下請け工場のものか。法的な意味ではなく、消費者の目にはどう映るだろう。そしてメーカーは独自ブランドとの差別化を、どのように説明できるだろうか。

そんな深淵な話でなくとも、消費者サイドと販売者サイドの双方から、ひとつずつ予想できることをあげておこう。

まず消費者サイド。生産者表示によって、小売業者が中国や韓国といった国々から輸入していることも当然ながら明らかになる。それが消費者の選別行動におそらく好影響は与えないだろう。

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