「少子化は最悪だ」という日本人は間違っている 日本の「人口問題の本質」とは一体何なのか

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「そもそも③」仮に少子化が止めるべき課題だとしても、現在行われている、あるいは行われようとしている政策は、ほとんどすべて効果がない。なぜなら、ほとんどの政策が現金のバラマキであり、出生数を増やす理由はないからである。

そもそも経済的理由が少子化の原因ではない。「最大のそもそも」として、少子化の原因は特定できない。誰も、なぜ少子化が起きているのか確信がないままに、「カネを配って悪いことはない」と、ひたすらバラまいている。

結果として、ただの票の買収活動になっている。だから、所得制限を外して対象者をひたすら増やすなどしている。バラマキで出生率が上がろうか否かなどは関係ないのである。給付と出生率の上昇の検証などに関心がないのである。そして、その流れをメディアも国民も無検討に受け入れ、大きな潮流をつくってしまっている。

なぜ人口は増加し始めたのか

この3つの根本的な問題をもう少し議論してみよう。まずは「そもそも①」の「少子化は経済発展の結果」と、「そもそも③」の「仮に少子化が止めるべき課題だとしても、現在行われている、あるいは行われようとしている政策は、ほとんどすべて効果がない」から、である。

例えば、欧州の人口は18世紀半ば以降にテイクオフ(離陸)した。一方、中国をはじめとするアジアでは、はるか前、約1000年(11世紀)前後から農業生産力が上昇し、経済が発展、人口が増え始める兆しがあった。だがその後、周辺の遊牧民族の席巻や、欧州から持ち込まれたともいわれるペストなどの感染症の流行で、人口は押し下げられ、増加は目立たなくなった。

しかし、要は世界的に見れば、人類の歴史上、経済発展と生活水準の上昇は、まずは人口を増やしたのである。これは、マルサスの人口論的な増加である。皮肉にも英国のT・R・マルサスが18世紀の末において「人口増加は不可能だ」と宣言した直後から、欧州の人口は目に見えて増え始めたのである。

このとき、人口が増加した理由は、食料の入手量が増加したからである。また19世紀以降の増加は、衛生面の改善や医薬の進歩などにより、乳幼児死亡率が低下したためである。当時の平均的な生活水準は「生存維持以下、またはギリギリ」であった。だから、経済水準が上がると人口は増加したのである。

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