16年で300店、「焼肉きんぐ」が勝ち組になれた訳 ファミリーへ訴求、「韓国フェア」で学生も支持

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ここでいう“おせっかい”とは、飲料のフルサービス(座席まで運ぶ)も含めて、「あなたのためにこれも行う」の、おもてなし精神だろう。セルフサービスになじんだ現代の消費者にも好評のようだ。ただし、提供までに時間がかかりすぎると「100分」という制限時間内で食べ放題を楽しむお客から不満が出そうだ。

「提供に時間がかかり、お客さまにストレスを感じさせない工夫もしてきました。適切な人員配置と配膳ロボット『Servi(愛称みーと)』(ソフトバンクロボティクス社製)の活用です。このやり方で迅速な提供をめざしています」(同)

成長の死角は「原材料の高騰」と「待ち時間」

国内300店舗を達成した「焼肉きんぐ」だが、外食店の国内店舗数では、ハンバーガーの「マクドナルド」は2960店(2023年3月末現在)、カフェの「スターバックス コーヒー」は1792店(2022年12月末現在)を展開している。

もちろんこれは業態の違い、客単価や来店頻度の違いもあるので、単純に比較できる話ではない。「焼肉きんぐ」の来店頻度は平均して3カ月に1回だと聞く。

成長を続ける「焼肉きんぐ」の今後の課題は何か。昨年の取材では「原材料の高騰と人材の確保」を挙げていたが、いずれも引き続きの課題のようだ。

「原材料に限らず、この2~3年、多くの諸経費が値上がりしており、企業努力で吸収できないところにきています。今回、一部メニューの価格改定をさせていただきましたが、品質の維持・向上には努めていきます」

人気が高まった結果起きた「混雑の解消」も課題だろう。都内店舗の順番受付状況を昨年からチェックしてきたが、最大混雑時に「ただいまの待ち:100組」という時もあった。「あの店はいつも混んでいる」とお客があきらめれば、販売機会損失につながってしまう。

飲食の価格やサービスで「利用客の潜在的な不満」を解消してきた「焼肉きんぐ」が残された不満とどう向き合い、顧客満足度を高めていくか。引き続き注目したい。

東京都内にある「焼肉きんぐ 駒沢公園店」(2022年3月、筆者撮影)
高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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