子供達が見た北海道新幹線「トンネル貫通」の瞬間 外界とつながると、一筋の光が差し込んできた

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工事の進捗状況を見ながら、実施日は3月29日に決まった。27日夕方には貫通まであと1mというところまで達し、そこで掘削作業をストップ。28日は一般の人が歩いても危険のないように足場を整備したり、清掃したりするなどして公開に備えた。

さて、本番当日。集合場所は長万部駅から函館寄りにおよそ10km離れた国縫駅の近くにある豊野トンネル坑口付近の作業ヤードだ。この日の道南エリアはよく晴れて青い海が太陽光を受けてキラキラと輝いていたが、なぜかトンネルの真上だけどんよりとした雲が太陽を隠していた。「天気予報では晴れるはずなんですけどねえ」。JRTTの担当者は、貫通の瞬間に「一筋の光」がトンネル内に差し込むかどうか気が気でない様子だ。

そんな心配をよそに、長万部町のバスが13時すぎに到着した。バスから降り立ったのは地元の子供たちとその保護者8組18人。子供たちの年齢は4〜10歳とまちまちだが、みな興奮の様子を隠さない。それはそうだろう。工事中のトンネルに入って、しかも貫通の瞬間に立ち会うのだから。太陽が出ているかどうかなんて気にしていない。

「造っているのはJRではなくJRTT」

親子連れたちを前に竹村所長が注意事項を説明したあと、一同は別のバスに乗り込み、トンネルの中に入っていった。報道陣を乗せたバスも後に続く。

トンネルの幅は約9.5m、高さは約8m。およそ800m走ったところでバスが停車した。親子連れたちが下車すると、トンネルの壁面にスライドや動画が映し出され、トンネル内で即席の説明会が始まった。「新幹線に乗ったことがある人はいますか?」。スタッフの質問に手を挙げた子供は1人もいなかった。

北海道新幹線の概要が子供向けにわかりやすく説明された後、その後は豊野トンネルの工事の内容についての説明だ。山岳トンネルで一般的なNATM工法で行われ、土の硬さによってロードヘッダー(回転式の半球形ドラム)やツインヘッダー(回転式のドラムカッター)などの掘削機械を使い分ける。今回は発破を使うほどではないという。1m掘るごとに周囲を鉄の枠で支え、コンクリートで固める。この作業を昼夜問わず繰り返し、1日におよそ4m掘り進む。

「新幹線が通るトンネルや橋、線路、駅は私たちJRTTが造っています。JRではありませんよ」という説明もなされた。あとで、スタッフから、「実はこれがいちばん強調したかったことなんです」と耳打ちされた。確かに整備新幹線のインフラを造っているのがJRではなくJRTTだということは、新幹線に乗ったことがない長万部町の子供たちどころか、全国のビジネスマンの多くも知らないに違いない。

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