「職員解雇」で日本郵便の敗訴が続く異常事態 かんぽ不正で解雇の6人中4人に「無効判決」
裁判に提出された「証人調書」によれば、契約者が元職員の男性に宛てた手紙には達筆な文字で以下のように書かれていた。
「聞けば職を失ったとのこと、それも懲戒解雇とのこと、私は首を傾げ、この文を残したいと思いました」
「母が亡くなって、私が入退院(を繰り返)している中で、契約を徐々に解約しました。子どもたちも3〜4件あったのを2件くらいにしたり、解約したり、時には加入したりと、君(=原告)は頑固な私の話を聞き、実行してくれて、30件以下の契約に減ってきましたね。私が頼んだ解約などが君の解雇につながったと思うと心苦しく、書き残すことにしたのです」
男性は懲戒解雇された当初、労働組合を介して職場復帰を試みた。「不正をした」というレッテルを貼られ、会社には何を言ってもまるで犯罪者のような扱いを受けてつらい思いをしたという。だが、訴訟を起こすと決めた頃には、現職員や元職員から男性の支援者が現れ100人を超えた。
「トカゲの尻尾切り」だったとの疑念
後日、このような問題になるような解雇に、日本郵便はなぜ踏み切ったのだろうか。
「だってトカゲの尻尾切りだもの」。水戸地裁に集まった支援者の元職員や現役職員は口々にそう言っていた。この支援者らの発言は、弁護士の見解と一致する。
「会社は公正な調査をする気持ちを持っていたといえず、結論ありきで、検討すべき証拠の存在を無視し、ターゲットにした職員の懲戒解雇を行うことに突き走った」(淺野弁護士)
「ターゲットにした職員」とは、契約と解約を頻繁に繰り返した顧客の営業担当職員を指す。ただ問題は、淺野弁護士が指摘するように「司法の場で改めて冷静に検証されると、懲戒解雇にまったく理由がなかったことが次々に明らかになっている」ことだ。
「この現実を会社はしっかりと受け止めて真摯に反省し、職員への対応を見直さなければ、かんぽ募集は本当の意味で改善に向かわないのではないか」と、同弁護士は危惧する。現状のままだと、現役職員から次のような疑問の声が上がってくるのも仕方がない。
「会社は組織ぐるみであることを否定するために、あくまでも『現場の渉外社員が己の利益のためにやった』ことにしたかったのではないか。『これだけ懲戒解雇しました』と監督官庁やマスコミに数字で示すために『処分ありき』だったのではないか」(東京の現役職員)
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