元Jリーガーも呼ぶ「公立中」の不登校支援の現場 IT会社「サイボウズ」のオフィス見学も行った
オフィスをひと回り見学した後、「なんでもいいから感想を一言ずつ言ってみよう」と先生に促されると、「自由な感じがした」「いい意味で変な会社だと思った」「こんな会社に入りたいと思った」など、各々の素直な感想が飛び出した。
同行した長島校長は、「みんなが働きやすくなるような工夫がいろいろあったね。みんなもこれを参考にして、どうしたら学校がもっと居やすい場所になるか考えて、提案してもいいんじゃないかな。ハンモックは吊れないかもしれないけどね(笑)」と生徒に語りかけていた。
なぜ不登校生徒の支援をするのか
今回のオフィス訪問の経緯をサイボウズ社長室の前田小百合さんに聞いた。
――オフィス訪問実現のきっかけは?
もともと鴨居中は2019〜2021年度に経産省主催の「未来の教室実証事業」の実証校になり、ICTを使った学習環境をいち早く整備した学校として知られていました。当時の校長である齋藤浩司前校長とお話しする中で、「和みルーム」の存在も知りました。
昨年、齋藤先生から現校長の長島先生を紹介いただき、「和みルーム」の生徒さんたちに何かお手伝いできないか、と相談をしたのが始まりです。
――なぜ、サイボウズが不登校生徒の支援を?
サイボウズは、『チームワークあふれる社会を創る』という目標に向かって活動をしていて、私は社長室に所属しています。社長室は、メンバーそれぞれが関心のある社会課題を解決するための取り組みをしていて、災害支援をしているチームもいれば、各地域の起業家を応援する交流会をしているチームもいます。
その中で私を含む5名のチームは『サイボウズらしいワクワクする子どもの学びの場を創ろう』というプロジェクトを立ち上げました。私自身、3人の子どもの親であり、PTA活動もやっていたので子育ての大変さ、学校の先生の忙しさは身にしみてわかっていました。
中でも、最近急増している不登校の子どもたちの問題については特に課題意識を持っていたので、なんとか一企業として関われないか、と考えたのです。
――いままでにどんな取り組みをやったのでしょうか?
まずはオンラインで生徒たちとお話ししたり、和みルームに見学に行ったり、少しずつ交流をしていくことからスタートしました。
その中で、弊社のクラウドサービスであるkintone(キントーン)を生徒たちのコミュニケーションの場に使うことを思いつきました。キントーンは、業務を構築するためのアプリですが、複数人で円滑にコミュニケーションが取れることも特徴です。
そこで私たちサイボウズの社員数名と校長先生、指導員の先生、和みルームの生徒たちでグループを作り、IT上でつながることができる小さな居場所を作ったのです。
不登校の生徒たちは横のつながりが希薄になりがちなので、その解消の一助にもなりますし、子どもたちとわれわれ企業人が直接コミュニケーションができるというのは、なかなか斬新な試みでもありました。
もちろん最初からうまくコミュニケーションができたわけではなく、最初は発信するのは大人ばかり、という時期もあったのですが、次第に「今日はこんなところに行ったよ」と発信をする子が出てきたり、同じ趣味の話で盛り上がることも出てきました。リアルの場だとうまく話せない子でも、デジタル上だといろいろ話せる、という子が出てきたのも発見でした。
そのような交流の中で、子どもたちから「会社に行ってみたい!」という提案が出て、今回の企画になりました。生徒さんたちの交流は私たちにとっても非常に学びになっています。いずれはサイボウズが学校を作りたい!と思っていて、和みルーム初め、いろんな学びの場と関わりながらどんなことができるか模索しています。
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