しかし資本主義はきわめて暴力的になりがちだ。資本は、蓄積を阻む障壁(市場の飽和、最低賃金法、環境保護など)にぶつかるたびに、巨大な吸血イカさながらに身をよじってそれを破壊し、新たな成長の源へ触腕を伸ばしていく。これが「解決策」と呼ばれるものだ。
囲い込みは解決策だった。植民地化は解決策だった。大西洋の奴隷貿易は解決策だった。中国とのアヘン戦争は解決策だった。アメリカの西部開拓は解決策だった。これらの解決策はすべて暴力的だったが、新たな強奪と蓄積への道を切り開いた。いずれも資本の成長要求に応えるためだ。
19世紀の世界経済は現在の貨幣価値で1兆ドルをやや上回る程度だった。それを年3%の割合で成長させるには、資本家は約30億ドルに相当する新たな投資先を見つけなければならない。
かなりの額であり、しかもその金額は年々増えていく。これは投資家に多大な努力を求めた。その努力には19世紀を象徴する植民地の拡大も含まれていた。
資本主義の冷酷な「鉄則」
現在、世界経済は80兆ドル超に相当するため、年3%の成長率を維持するには、資本家は2.5兆ドル相当の新たな投資先を見つけなくてはならない。
2.5兆ドルは、世界最大級であるイギリス経済の規模だ。どうにかしてこの先の1年でイギリス経済と同等のものを現行の経済に追加できたとしても、翌年にはさらに多くを追加しなければならず、それはずっと続く。
一体どこで、これほど大量の成長を手に入れることができるだろう。このプレッシャーはすさまじい。
それに突き動かされているのが、アメリカでオピオイド危機〔鎮痛薬依存症〕をもたらした製薬会社、アマゾンの森林を焼き払っている牛肉販売業者、銃規制に反対するロビー活動を展開する銃器メーカー、地球温暖化否定論に資金提供する石油企業、ますます巧妙な広告手法でわたしたちの生活に侵入して不必要な物を買わせようとする小売業者だ。
それらは「腐ったリンゴ」ではない。資本主義の鉄則に従っているだけなのだ。
(翻訳:野中香方子)
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