「教場」で“何を演じてもキムタク"にはならない訳 木村拓哉「眠れる森」「空から降る」から続く真骨頂

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ダークヒーローを演じるときの木村さんは、悪ぶっても、どこか悲しげで、切なさを感じさせるような表情や仕草、話し方や歩き方などが、当時から「自然体の演技に近いのでは」と言われていました。

また、私がよく知るバラエティの演出家は、「SMAPという絶対的なアイドルが抱える孤独が役に重なって見える」とも言っていました。確かに「SMAP×SMAP」(カンテレ・フジテレビ系)などバラエティの撮影現場で見た木村さんは、気さくでサービス精神旺盛な印象がある一方で、ダークヒーローを演じているときのような孤独を感じさせる瞬間があったことをよく覚えています。

年齢を重ねて増す「悪さ」「怖さ」

木村さんが「トップアイドルであり、“視聴率男”“抱かれたい男”などの絶対的な存在であることを自覚せざるを得なかったから、孤独を感じていたのか」はわかりません。ただそれでも、絶対的な存在だからこそダークヒーローを演じるときの振り幅は大きく、そのギャップに魅了された人々が多かったことは間違いないでしょう。

「空から降る一億の星」から18年もの時を経た2020年の「教場」では、年齢を重ねアラサーからアラフィフになったことで、ダークヒーローとしての「悪さ」「怖さ」が増していました。そこからコロナ禍や戦禍などのシビアな年月を経た今春の「風間公親 教場0」は、さらに凄みを増しているのではないでしょうか。

木村さん自身、「“教場”という特別な空間である、警察学校の中だからこそ成り立っていた風間公親という存在が、皆さんが行き交う一般社会の中にいる場合、この描き方が難しいなと思っていた」とコメントしていました。風間公親が教場ではなく一般社会に飛び出すことで、より「悪さ」「怖さ」が際立つとしたら、ネット上の話題を集めるでしょう。

いずれにしても、「『世の中の教育の流れとは全く真逆の方向性のものを放送して大丈夫なのかな?』と話していた」「“フジの月9”っていうあの空気は、今回全部入れ替わると思います」などとも語っていたように、放送スタート後にSNSを賑わせるのは間違いなさそうです。

世間の人々に「ダークヒーローと言えば木村拓哉」という新たな印象を与えられるのか。のちに「ターニングポイントだった」と言われるなど、今後の出演作にも影響を及ぼす可能性を秘めた作品になるでしょう。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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