「ノースフェイス」企業がオンライン接客重視の訳 絶好調「ゴールドウイン」に聞いたEC成功の秘訣

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そんな中、スタッフスタートは、業務の効率化と貢献度の可視化ができ、課題解決につながるツールだと判断し、採用を決めた。店舗スタッフがリアル店舗で培ってきたノウハウやセンスなどに基づいて作成するコーディネート写真を、手軽に自社ECやSNSへ投稿できるようにして業務をサポートする仕組みだ。

また、そのコンテンツ経由でスタッフ一人ひとりがどれだけ自社ECのアクセスを稼いでいるか、EC売り上げに貢献しているかを可視化することができる。直営店約150店舗のうち、アウトレットや百貨店インショップを除く直営店・プロパー店舗約100店舗で活用している。

最近では投稿経由売上高がEC売上高の50%近くに到達している。効果があることが裏付けられ、投稿やツール活用の重要性が社内で認められるようになった。

ゴールドウインでは全店舗、内装デザインも品ぞろえも個店独自のもので、1店舗たりとも同じ店はない。それだけ個性や多様な顧客体験を大切にしている企業・ブランド集団だと言える。コーディネート投稿やウェブ接客、ライブコマースなどのオンライン接客についても、基本ルールやマニュアルは本社から提示するが、店舗の裁量が大きいのが特徴だ。

ただし、店舗には「自店に来店してもらいたい」「リアル店舗の売り上げを伸ばしたい」という思いが強く、EC担当者の「EC売り上げを伸ばしたい」という思いと必ずしも合致するものではない。「OMOを本気で強化・推進するためには、『利他の精神』を持ち、全体最適や全社の売り上げ成長を目指すことが、一番重要なポイントになる」と梅田氏。

スタッフのモチベーションが上がった施策

そんな背景もあって、店舗ごとにチームで一丸となってオンライン接客に取り組むスタイルをとる。「テーマ決定」「コーディネート決定」「モデル」「撮影」「テキスト執筆」「アップ作業」など役割を分担しながら、制作時間も業務スケジュールに組み込んでいる。

これに対して、デジタル活用で知見のあるEC担当者からは投稿のヒントを伝えたり、アドバイスをするなど、サポートに力を入れるようにしている。

今後は、人事の評価システムに組み込み、社としてオンライン接客や投稿の重要性を明示しつつ、全体の最適化にもつなげたい考えだ。

その前段階として、2021年から年1回、全国店長会議に合わせて貢献上位店舗を表彰するとともに、インセンティブの提供を開始した。店舗単位の分業制でコンテンツを制作しているため、表彰も店舗単位で実施。対象は上位10店舗と各ブランドの事業部メンバーが選んだブランド賞としている。

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