東武伊勢崎線の「先のほう」には何があるのか 特急は1日に上下1本、昼間は各停が健気に走る

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北関東のこのあたりは、戦後工場がどんどんできるようになって、住宅地がその周辺に設けられた。商業施設も広い道路沿い。大きな観覧車のある華蔵寺遊園地には熊谷や本庄あたりから訪れる人もいるという。ただ、そうした生活を支えているのは鉄道よりクルマだ。

「最近では伊勢崎でも中心市街地の活性化に取り組もうという動きが出てきていまして、私たちも市のミーティングに参加して、盛り立てていきましょうという話をしています。活性化の一翼を東武鉄道も担えればいいですよね。たくさん人は住んでいますから、まだまだ捨てたもんじゃないと思うんです」

「昔の伊勢崎駅前はロータリーに自転車預かり所があって、お茶とお団子を出すような小さな店があって、果物屋さんがあって。親戚の家を訪ねるときは果物屋でお土産を買っていく、みたいなそういう駅だったんですよね」(小此木さん)

どこか懐かしい路線

そうした時代の伊勢崎駅には、やはりご当地名物の“駅そば”があったとか。

「私も学生時代にはよく食べました。東武のホームから両毛線の乗り場に行く途中にあったんですよ。昼間は折り返しの東武線も長く停まっているから、電車の中のイスをベンチ代わりに食べている学生さんがいたりしましてね」(小此木さん)

「いまでもよく言われるんです、あのそば屋さん、うまかったよねって」(難波さん)

伊勢崎出身の小此木さんと桐生出身の難波さん。ふたりとも思い出は尽きない。そんな時代とはすっかり姿を変えた伊勢崎駅だが、境町駅や木崎駅などに往年の面影はまだ残る。クルマ社会の中で“通学路線”として奮闘する鉄道は、そうした地元の人々の思い出をいまも作り続けているのだろう。大都会とはちょっと違ったそんな鉄道の風景を楽しみに、伊勢崎線の「先のほう」を訪れてみてはいかがだろうか。

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鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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