WBC栗山監督「挫折の多い人生」支えた言葉の正体 WBCで侍ジャパンを率いた栗山監督の"哲学"

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2019年シーズンのキャンプインを前に、一緒に食事をする機会がありました。久しぶりに会った彼は、私の知る「大谷翔平」そのままでした。謙虚で、真面目で、礼儀正しい好漢です。

メジャー1年目を経た成長も感じました。アメリカという未知の環境で足搔いて、もがいて、自分の道を切り開いていったのでしょう。心が開かれているな、という印象を受けました。艱難辛苦(かんなんしんく)を乗り越えた者が持つしなやかな力強さが、さらに増しているようでした。

一度きりの人生だから、一日でも無駄に過ごしたくない。野球への情熱を燃やし続ける。彼の真っ直ぐな生き方はとてもまぶしく、私を奮い立たせてくれます。

「一燈照隅(いっとうしょうぐう)」

私の人生は阻まれてばかりです。山あり谷ありどころか、エベレスト級の山が眼前にそびえたち、とびきり急峻な谷間に立ち尽くしたりしました。

テスト生でヤクルトスワローズに入団した当初は、プロのレベルの高さに戦慄を覚えました。ここは自分がいるべき場所ではない、自分などいてはいけないとの絶望が心のなかで重い塊となり、いっそ死んだほうが楽ではないかとさえ考えたことがありました。

周囲の励ましや支えによって1軍でプレーできるようになると、メニエール病に襲われました。三半規管に原因のあるめまいが予告もなしに襲ってきて、しかも原因上明なので完治はできない。全力でプレーできない自分を許すことができず、29歳で現役を引退しました。

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