勝田線が「廃止すべきでなかった」と言われる由縁 鉄道とは関係なくベッドタウン化した沿線
こうした路線バスの利便性に対し、1日数往復の勝田線では話にならなかったであろうが、それだけの旅客流動があるなら、電化など根本的な輸送改善を行っていれば、あるいは生き残れたかもしれない。ただ廃止が打診されても第三セクター鉄道への転換すら行われなかったのだから、すでに大都市近郊としての道路交通網は整っており、地元が改めて鉄道へ投資する必然性はなかったのである。
下志免からは11時40分発の34系統原田橋行きで勝田。折返し12時26分発の32系統で宇美町役場入口まで戻る。特に時刻表を確認せずとも、待っていればほどなくバスが現れる感覚があった。いずれも利用客は多く、停留所ごとに乗り降りが繰り返された。そして福岡市直通ばかりではなく、西鉄太宰府駅、同雑餉隈駅、JR南福岡駅へ向かう系統もある。旧筑前勝田駅跡も公園になっているが、今や周囲は住宅街に囲まれている。
実質的な代替路線は香椎線
宇美町の中心部にも小規模ながら郊外の町らしい商業の集積が見られ、公的施設や病院なども集まる。自動車の交通量もやはり多く、狭い街路が混雑している。上宇美は転回場もあるバス停であり、高齢者を中心ににぎわっていた。
利用客数の違いから特定地方交通線には指定されず、今も通勤通学客を中心に活用されているJR香椎線の宇美駅は、宇美町役場入口や上宇美のバス停からさほど離れていない。
志免町ではなく須恵町や粕屋町を通るが、旧勝田線からは数キロメートルほどの間隔で並走していたので、実質的にこの鉄道が代替路線と見なすこともできよう。香椎―宇美間の2021年度の一日平均通過人員は6987人にも達する。1987年度の同区間が3690人であったから、この間の発展がうかがえる。今では毎時2〜3本の列車が走る。
香椎線も元は運炭路線だが、残存したことからJR九州が承継すると積極策に転じ、1988年には篠栗線と立体交差しつつも駅がなかった伊賀―酒殿に、乗り換え駅として長者原駅を新設。さらに1991年には吉塚止まりだった篠栗線の全列車が博多まで直通するようになり、香椎での鹿児島本線への乗り換えでは遠回りだった香椎線の沿線の利便性が大きく向上している。宇美―博多間の所要時間は、今では30分弱だ。
香椎線は非電化のままながらも、ディーゼルカーでの運転から蓄電池式電車での運転に変わり、より近代化されたスタイルとなった。もしかすると取り組み次第では、勝田線も同じような姿になっていたかもしれず、歯がゆいところだ。
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