人生順調だった3人兄弟が滑り落ちてつかんだ事 大事なのはどこに住むかではなく、どう暮らすか

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
一軒家、賃貸、タワマン
賃貸が賢い? 一軒家が安心? タワマンこそ至高? 人生にとって大事なことは?(写真:cba、CORA、years/PIXTA)
Twitterにツリー形式で書かれた小説は「タワマン文学」や「Twitter文学」と呼ばれ、麻布競馬場さんや窓際三等兵さんといったベストセラー作家を輩出したことから、いま大きな注目を集めています。
そんな「Twitter文学」の中から傑作を集めたショートショート集『本当に欲しかったものは、もう――Twitter文学アンソロジー』。麻布さんや窓際さんはもちろん、プロの小説家までもが参加しています。今回集英社とのコラボにより、書籍に収録されている「新釈 三匹の子豚」(窓際三等兵・作)という短編を、全文公開します。
それぞれ賃貸・戸建て・タワマンを選んだ三兄弟は、どんな人生を歩んだのでしょうか?

【新釈 三匹の子豚】

むかしむかし、ある所にお母さん豚と3匹の子豚がいました。お母さん豚は「あなたたち、そろそろ家を出なさい。実家で暮らす男は婚活市場で地雷扱いされるし、子供部屋おじさんになられても困るわよ」と、子供たちの独立を促しました。愛する我が子をあえて突き放す――それが彼女なりの愛情表現です。

長男の子豚は賢く、東工大を卒業し日本生命でアクチュアリーとして働いています。勉強熱心な性格で、本棚にはタワマンバブルの崩壊を予告する本がずらりと並んでいます。「人口減少が続く日本で借金を背負って家を買うなんてリスクが大きい、空き家問題は将来深刻になる」と、購入ではなく賃貸を選択しました。つみたてNISAとiDeCoで老後に向けた資産形成もバッチリです。

次男の子豚は明治卒でNTT子会社勤務。おっとりした性格で、「周りのみんなも買ってるし」と、大学の同級生や会社の同期に流されるがまま六郷土手駅徒歩9分の戸建を買いました。駅から少し歩きますし、20坪の狭小邸宅は少し窮屈ですが、贅沢を言っても仕方ありません。晩酌は発泡酒、子供の習い事は公文と少年野球。休日は少年野球のコーチで大忙しです。

三男の子豚はパリピ。慶應ではテニサーの副代表を務め、博報堂に就職後ほどなくデキ婚して湾岸にタワマンを買いました。「どうせ五輪後に暴落するぞ」「住宅ローンは年収の5倍におさめたら」という、兄たちの助言はガン無視です。「刹那的に今を生きる」、それが福沢諭吉が教えてくれた学問のすゝめ。

次ページ最初に異変が訪れたのは長男の子豚
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事