人生順調だった3人兄弟が滑り落ちてつかんだ事 大事なのはどこに住むかではなく、どう暮らすか
【新釈 三匹の子豚】
むかしむかし、ある所にお母さん豚と3匹の子豚がいました。お母さん豚は「あなたたち、そろそろ家を出なさい。実家で暮らす男は婚活市場で地雷扱いされるし、子供部屋おじさんになられても困るわよ」と、子供たちの独立を促しました。愛する我が子をあえて突き放す――それが彼女なりの愛情表現です。
長男の子豚は賢く、東工大を卒業し日本生命でアクチュアリーとして働いています。勉強熱心な性格で、本棚にはタワマンバブルの崩壊を予告する本がずらりと並んでいます。「人口減少が続く日本で借金を背負って家を買うなんてリスクが大きい、空き家問題は将来深刻になる」と、購入ではなく賃貸を選択しました。つみたてNISAとiDeCoで老後に向けた資産形成もバッチリです。
次男の子豚は明治卒でNTT子会社勤務。おっとりした性格で、「周りのみんなも買ってるし」と、大学の同級生や会社の同期に流されるがまま六郷土手駅徒歩9分の戸建を買いました。駅から少し歩きますし、20坪の狭小邸宅は少し窮屈ですが、贅沢を言っても仕方ありません。晩酌は発泡酒、子供の習い事は公文と少年野球。休日は少年野球のコーチで大忙しです。
三男の子豚はパリピ。慶應ではテニサーの副代表を務め、博報堂に就職後ほどなくデキ婚して湾岸にタワマンを買いました。「どうせ五輪後に暴落するぞ」「住宅ローンは年収の5倍におさめたら」という、兄たちの助言はガン無視です。「刹那的に今を生きる」、それが福沢諭吉が教えてくれた学問のすゝめ。