青い森鉄道が示すローカル線「上下分離」の光と影 最長の並行在来線、中心市街地との連携不可欠

✎ 1〜 ✎ 57 ✎ 58 ✎ 59 ✎ 60
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

人口減少と高齢化に加えて、同社は当面の課題として車両・施設の老朽化を挙げる。「保有車両の多くが25年以上を経過し、トンネルや橋梁も老朽化が進んでいる」と同社。さらに、次代を担う若手人材の確保が厳しく、組織の中心となる中堅リーダーの育成、さらに組織力の強化が課題という。

また、とくに県外からの利用者の間ではSuica導入の要望が強い。青森県内でもバスやタクシー、一般の店舗などでSuica普及が進み、JR東日本の奥羽本線でも今年5月にSuicaが使用可能になる。このままでは青い森鉄道が取り残される。

だが、同社は「初期投資や導入後の維持管理に多額の費用がかかるほか、IGRいわて銀河鉄道線と相互乗入を行っているなど、当社の実情を踏まえた検討が課題」とコメントし、具体化のメドはまだ立っていない。

上下分離に改めて注目

新幹線開業に伴い発足した並行在来線会社9社の中で、上下分離方式を採用しているのは同社だけだ。県の強い関与は民間の経営センスを生かすうえで足かせになりかねない、という批判的な指摘も存在する。その一方で、他の並行在来線関係者からは、これまでも「自治体が並行在来線を守り抜く姿勢の表れ」といった声が聞かれていた。

コロナ禍によって鉄道の経営環境が悪化する中、国土交通省の有識者会議は2022年7月、輸送密度1000人未満の地方鉄道について、JRか自治体の要請に基づいて国主導の協議会を設置し、存廃を判断する仕組みを導入すべきだと提言した。

自治体がどの程度、どのようなかたちで鉄路の維持に関わるべきか。議論が高まる中、青い森鉄道が言及される場面も増えている。上下分離の光と影について考えるうえで、青い森鉄道の足跡と現状は貴重な資料となるかもしれない。

この記事の画像を見る(10枚)
この連載の記事一覧はこちら
櫛引 素夫 青森大学教授、地域ジャーナリスト、専門地域調査士

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

くしびき もとお / Motoo Kushibiki

1962年青森市生まれ。東奥日報記者を経て2013年より現職。東北大学大学院理学研究科、弘前大学大学院地域社会研究科修了。整備新幹線をテーマに研究活動を行う。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事