直通運転により利便性が向上する一方、列車ダイヤや車両の運用は複雑化する。新横浜線開業により、東横線・目黒線合わせて8社局17車種の車両が走ることになる東急電鉄の運輸部担当者は、「運行管理システムを一昨年に刷新し、運輸司令所も新しくして新横浜線の開業に備えてきた」と話す。
ダイヤの作成には長期間を要した。「TTCという運行管理システムの見直しも含めて、具体的な作成に2年はかかった。構想からだともっと長い期間をかけている」と同担当者。東急新横浜線のダイヤは基本的に目黒線の延長という位置づけといい、その中に東横線直通の急行をどう組み込んでいくか、その間隔をいかに一定にできるかが難しい点の1つだったと話す。開業後は日中1時間当たり6本の運行だが、「増発が可能なよう検討もできている」という。
直通運転拡大で懸念されるのは、遅延や運休が発生した場合に影響が広範囲に及ぶことだ。対応の基本は、東横線系統・目黒線系統のどちらかで障害が発生した場合、もう1つの系統に影響を及ぼさないようにすることだという。「例えば、東横線系統の相鉄線直通に障害が発生した場合は武蔵小杉で運転を打ち切り、目黒線の直通列車に乗り換えていただく形にすれば目黒線系統には影響が出ない」(担当者)。「さまざまなパターンを想定してきめ細かく準備しているので、ご迷惑をかけないよう対応したい」と、担当者は気を引き締める。
「増益」には結びつかない新路線
新横浜へのアクセスや、相鉄沿線から都心部への利便性向上などが見込まれる相鉄・東急新横浜線。だが、実は「儲かる」路線ではない。
新横浜線は「都市鉄道等利便増進法」という整備手法で建設された。この手法では、建設費用を国と自治体(神奈川県・横浜市)が3分の1ずつ補助し、残る3分の1は同機構が借り入れて調達し、路線を整備・保有する。相鉄と東急は、線路や駅などを借りて営業するために「施設使用料」を同機構に支払い、機構側はこれで借入金を償還する。
施設使用料は新線開業によって生じる増収分から経費を引いた額で、収支均衡となるスキームだ。このため、鉄道会社にとって開業そのもので利益は出ない。プラスの効果を発揮するには、沿線開発などの波及効果を生み出せるかが重要になる。
相鉄・東急新横浜線、開業までの経過
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ホームで待機する新横浜駅発の一番列車
=2023年3月18日3時50分(記者撮影)
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前面には「祝開業」のヘッドマークが
=2023年3月18日3時50分(記者撮影)
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車両側面のステッカー
=2023年3月18日3時50分(記者撮影)
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記念乗車券を購入する人の列
=2023年3月18日4時10分(記者撮影)
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相鉄の都心直通プロジェクトをPRする看板
=2014年(記者撮影)
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新横浜線(相鉄・JR直通線)開業に向けて
工事中の西谷駅=2014年(記者撮影)
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工事中の西谷駅。今ではすっかり様相を変えた
=2014年(記者撮影)
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新横浜駅の工事現場。この真下に
駅を建設した=2014年(記者撮影)
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新横浜駅の工事現場
=2014年(記者撮影)
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日吉駅付近に掲出されていた工事概要
=2014年(記者撮影)
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日吉駅付近の工事現場
=2014年(記者撮影)
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開業半年前の羽沢横浜国大駅
=2019年3月(記者撮影)
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羽沢横浜国大駅から延びる線路。中央の2本が
新横浜方面へ向かう=2019年3月(記者撮影)
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工事中の新横浜駅
=2021年4月(撮影:尾形文繁)
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工事中の新横浜駅
=2021年4月(撮影:尾形文繁)
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工事中の新横浜駅
=2021年4月(撮影:尾形文繁)
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工事中の新横浜駅ホーム
=2021年4月(撮影:尾形文繁)
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工事中の新横浜駅地下2階。エスカレーターが見える
=2021年4月(撮影:尾形文繁)
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工事中のトンネル内
=2021年4月(撮影:尾形文繁)
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工事中のトンネル内
=2021年4月(撮影:尾形文繁)
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工事中のトンネル内
=2021年4月(撮影:尾形文繁)
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工事中のトンネル内
=2021年4月(撮影:尾形文繁)
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工事中の新綱島駅日吉側。パイプを並べて内側を掘る
「非開削工法」だ=2021年4月(撮影:尾形文繁)
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掘削後のトンネル直上で起きた道路陥没の現場
=2021年6月(記者撮影)
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開業に向けた準備が進む新横浜駅
=2022年7月(記者撮影)
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新横浜駅で開いたレール締結式
=2022年7月(記者撮影)
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新横浜駅に入線した試運転列車
=2022年11月(記者撮影)
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新横浜駅の駅名標。相鉄とも東急とも異なるスタイルだ
=2022年11月(記者撮影)
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新横浜駅は中央にも線路が1本ある2面3線の構造。
列車の折り返しができる=2022年11月(記者撮影)
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新横浜駅の構内図
=2022年11月(記者撮影)
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東急が管理する新横浜駅北改札は白を基調としたデザイン
=2022年11月(記者撮影)
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相鉄が管理する南改札側はレンガとグレーが基調のデザイン
=2022年11月(記者撮影)
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新横浜駅で開いた「しゅん功開業式典」
=2023年3月5日(写真:鉄道・運輸機構)
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新横浜駅で開いた「しゅん功開業式典」
=2023年3月5日(写真:鉄道・運輸機構)
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開業を控えた東急新横浜線の新綱島駅
=2023年3月(記者撮影)
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新綱島駅のホームに停車する相鉄の試運転電車
=2023年3月(記者撮影)
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新綱島駅から渋谷・目黒方面への路線図。
乗り入れ先は多岐にわたる=2023年3月(記者撮影)
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ホーム壁面は鶴見川を意識した水色系のデザイン
=2023年3月(記者撮影)
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壁面に見る工法の違い。水色の部分は開削工法、左側は
「角型鋼管推進工」による非開削工法で建設(記者撮影)
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新綱島駅改札付近には発光するガラスパネルを設置。
四季を表現して色が変わる(記者撮影)
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新綱島駅改札付近には発光するガラスパネルを設置。
四季を表現して色が変わる(記者撮影)
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新綱島駅改札付近には発光するガラスパネルを設置。
四季を表現して色が変わる(記者撮影)
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新綱島駅改札付近には発光するガラスパネルを設置。
四季を表現して色が変わる(記者撮影)
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新横浜線を取り巻く環境も、計画時と比べて変化した。相鉄は新横浜線西谷―新横浜間の利用者数について、以前は開業から数年後で1日当たり21万7000人と見込んでいたが、「将来の人口推計など複合的な理由」(相鉄)により13万5000人に下方修正。東急は新横浜―新綱島間について1日14万人程度と見込んでいる。コロナ禍によるリモートワークの浸透などで鉄道利用者数が以前の水準には戻らないとみられる中、利用の定着を図れるかが大きな課題だ。
計画から長い年月をかけて、ついに走り出した相鉄・東急新横浜線。「7社局14路線」の広域ネットワークを活かし、新幹線利用者や都心直通の利用者をいかに取り込めるか、鉄道各社の連携が問われることになる。
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おさの かげとし / Kagetoshi Osano
1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。
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