中国の太陽光パネルやEV(電気自動車)向け車載電池の業界で、企業の(生産能力拡大の)投資先に大きな変化が起きている。
「太陽光パネル業界では、以前の投資先は(中国を中心とする)東アジア、東南アジア、南アジアに集中していた。しかし最近、新規投資の一部が欧米諸国に移りつつある。車載電池業界でも同様に、2021年以降は欧米諸国への大型投資が目立ち始めた」
アメリカの情報サービス会社、ブルームバーグNEFの中国担当チーフアナリストを務める寇楠楠氏は、3月7日に開催した同社主催のフォーラムでそう述べた。
背景には、新型コロナウイルスの世界的大流行により生じたグローバル・サプライチェーンの寸断、そして2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻の影響がある。エネルギー確保のための安全保障体制や、輸入エネルギーへの過度な依存を見直す機運が世界各国で高まり、エネルギー関連のサプライチェーンを自国内や近隣諸国に移す「ブロック化」が加速しているのだ。
サプライチェーン再構築は不可避
それだけではない。太陽光発電、風力発電、リチウムイオン電池、EVなどの分野に関して、中国はサプライチェーンの川上から川下までをほとんどカバーする産業基盤を持つ。一方、欧米諸国はこれらの大部分を(中国からの)輸入に頼ってきた。
「一部の国では技術革新の遅れ、雇用の流出、税収の機会損失などへの懸念が高まり、貿易摩擦の要因になっている」と、寇氏は解説する
サプライチェーンのブロック化を象徴するのが、2022年8月にアメリカで成立した「歳出・歳入法(インフレ抑制法)」だ。同法には、アメリカの消費者がアメリカ本土で製造されたEVを購入する際に、1台当たり最大7500ドル(約102万円)の税額控除を受けられる措置が盛り込まれた。
インフレ抑制法は、EVに搭載される車載電池がアメリカ本土で製造されたものであることや、電池の原材料の一定比率以上をアメリカ本土またはアメリカが自由貿易協定を結ぶ国から調達することも求めている。これらの規定は、中国製の車載電池を排除して新たなサプライチェーンを構築するよう(EVメーカーに)求めているに等しい。
類似の動きは、太陽光パネルの分野でも広がりを見せている。
「すでに15の国や地域が(外国製の太陽光パネルの輸入を制限する)貿易上の障壁を設けたり、自国内での(太陽光パネルや部品の)製造に補助金を支給したりしている。それらの政策の4割以上は2019年以降に打ち出されており、最近ますます増えている」。ブルームバーグNEFで太陽光発電分野のアナリストを務める譚佑儒氏は、そう解説した。
(財新記者:羅国平)
※原文の配信は3月8日
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