日本の経済状況が不安定化し、勤め先での雇用の安定や定期昇給が見込めない中で、結婚や子育てに関する金銭的、労力的負担が大きく、諦めるしかなくなっている……というわけだ。
こうした「若者の貧困化」説に、私は違和感を覚える。じゃあ、お金があったらクルマを買い、お酒を飲み、彼氏彼女を作るのか? 将来、課長、部長と昇進して給料も上がると思えたら、旅行に行き、結婚し、出産するのか?
仮に若者が貧困化しているとして、それは「子どもを持つことを望んでいるが、それを選択できない理由」としては成立する。しかし、そもそも「子どもを持ちたくない理由」に適用していいのかどうかは疑問だ。
まだある。なぜ若者は、子育てにそんなにお金がかかると思っているのだろうか? 具体的に何をイメージして「お金がかかる」と考えているのか?
子育てでも周りから浮きたくない
私の見立てはこうだ。今の若者、特に「いい子症候群の若者たち」は、平均的水準にとどまることを絶対の最重要課題のように捉えている。ここでいう平均とは、自分の周りを観察した結果から得られる平均的姿を指し、そこからこぼれることに強い恐怖を感じる。と同時に、そこから抜け出し、目立ったり、成功したりすることに、ほとんど興味関心を持たない。
このことが子育てにも当てはまる。実際、BIGLOBEのデータも同じことを示唆しているように思える。「(自身と同様もしくは以上に)習い事や進学が難しいなら、子どもはあきらめるか人数を減らしたい」という人は63.7%、「(自身と同様もしくは以上に)習い事や進学ができるような支援があれば、子どもの人数を増やしたい」という人は66.5%に上るのだ。
自分や周りの人を見渡し、その平均的水準からこぼれ落ちるようなことは絶対に嫌。当然、子どももそんな状態には置けない。周りに合わせることが「正解」であって、自分もそう育てられた。そのために、お金が必要だ。しかし、それだけの稼ぎが得られるとは思えない。だから子どもは諦める……。
仮にこの説が正しいとすると、今の若者の多くは「子育てはお金がかかる」というより、「周りに合わせた子育てはお金がかかる」と考えていることになる。何とももどかしい状況だが、実は私のこの仮説、現在進行形で子育てをしている人ほど「わかる」と言ってくれる。
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