「日本のおもてなし」外国人にウケない"根本理由" 「インバウンド復活」でも観光産業は苦戦するか
経済産業省の「サービス産業×生産性研究会」が2022年3月にまとめた「サービス生産性レポート」によると、宿泊業では、付加価値の向上が必要な一方で、サービス提供に必要な人手が不足していて、売上の増加とともに評価が低下して、結局は売上も低下するという悪循環が発生しているという。
実際、森下氏によると、「おもてなし」をする旅館やホテルの人材についても、人手不足が著しく、3カ月単位の派遣社員でカバーしているケースもあるそうだ。自前で「おもてなし」ができない状態では、改善も見込めない。
今が自分たちの「おもてなし」を考え直す機会
また、人手不足の点からは、不要だと考えた「おもてなし」については、やめてしまうというのも手だ。編集部が取材したある旅館では、コロナ禍を機に、接触を避けるために客の荷物を運ぶことを辞めたそうだが、影響は出なかったそうだ。森下氏も選択肢の一つだとしている。
「価格を維持する代わりにサービスを簡素化する、または、サービスを維持する代わりに価格を上げる、といったことですね」
いずれにせよ、自分たちの「おもてなし」の価値は何であり、どう感じてもらうのかを考えることが重要になる。
「なかなか答えはないのですが、経営者や女将が、自分たちの方向性を決めて、現場で提供するものとして具現化していくことですね。おもてなしを通じて、お客さんと対話をしていくことを通じて、連綿としたサイクルを作れるかどうかではないでしょうか」
日本でも再び起きつつある人の動きの活発化。日本人と外国人を両方見据えたうえで、「おもてなし」のあり方をポジティブに捉え直すいい機会になりそうだ。
森下俊一郎(もりした・しゅんいちろう)
九州産業大学・地域共創学部准教授 研究テーマは、おもてなしの知識経営、顧客志向経営、サービスマネジメント。近著に「おもてなしの理念、知識、異文化のマネジメント」(晃洋書房)
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