「日本のおもてなし」外国人にウケない"根本理由" 「インバウンド復活」でも観光産業は苦戦するか
「『おもてなし』は、客が気付いてさえいないニーズを察して提供するもので、背景には日本の価値観や文化があります。一方で、外国のホテルなどが売りにしている『ホスピタリティ』は、あくまでニーズ自体は客から明示されていて、それにどう応えるかです。例えば、客が『水がほしい』と言った場合に、水の他にレモンが添えたり、冷えたグラスを出したりして、感動体験をしてもらうようなものです」
「察する文化」であるがゆえに、同じ文化や歴史、価値観を共有している日本人同士でないと、「おもてなし」の良さが伝わりにくいという。
“期待を超える対応”に感動する外国人もいる
それでも、日本文化や「おもてなし」に触れて、感動したという外国人も一定数いる。我々の取材でも、日本の「おもてなし」は日本人にしか受け入れられないという声の一方、期待を超える対応に感動する外国人もいるという声を聞いた。
たとえば、取材したある旅館では、自分たちの記念日に訪問した外国人客に対して、頼まれたわけではないけれども、サプライズでケーキを出して、とても喜ばれたという話を聞いた。このような話が一部にはあるものの、森下氏によると、そもそも日本の「おもてなし」の価値を外国人にきちんと伝えようとしていないケースが多いという。
「国の政策も含めて、『おもてなし』の要素を強くして、外国人の感動や満足を得ようと努力するのではなく、Wi-Fiを整備したり、布団を簡易ベッドにしたりと、外国人の不便や不満を削除することの方が強くなっています。外国人向けの『おもてなし』については、どうしたらいいのかわからずに悩んでいる旅館やホテルも多いのではないでしょうか」
実際に森下氏が外国人に評価される旅館を調査したところ、外国人には日本の宿の仕切りに合わせてもらい、特別なことはせず、困っていることがあれば、親身になって応える、気取らない家庭的な「おもてなし」と、不便さも含めた異文化体験が外国人から高く評価されていたという。