この橋を渡ると、只見川の対岸に見える山々の姿が大きく変わり、雪崩により山肌が浸食された独特の山容が車窓に広がる。そのひとつ「会津のマッターホルン」といわれる蒲生岳(標高828m)は「第七只見川橋梁」を渡る列車の行く手を遮るかのように迫り、秘境然とした雰囲気を漂わせる。
列車は会津若松から約3時間かけて只見駅に到着。ここからはいよいよ交通の難所として古くから知られた峠、六十里越に向かって発車する。行く手に田子倉ダムが見えてくると福島・新潟県境の田子倉トンネル(3712m)に入る。トンネルを出ると、かつてはスノーシェッド内に田子倉駅があったが、2013年に廃駅となり奥只見観光もままならない。せめて春から秋にかけての期間だけでも駅再開を望みたいところである。
分水嶺を越えると新潟県側の大白川駅に到着する。この駅は「そば処 平石亭」の手打ちそばが名物だ。ただ、423Dで途中下車すると次の小出行きは7時間後だ!
135km・4時間半の旅
新潟県に入ると、福島県側の車窓風景とは一変して、魚野川の支流に沿って広がる越後の里山風景が車窓を和ませる。
無人駅の越後広瀬駅は映画「男はつらいよ」シリーズの第7作である「男はつらいよ 奮闘篇」(1971年)の冒頭、寅さんが集団就職で上京する少年少女を激励するシーンが撮影された駅だ。当時はC11形の牽く旅客列車が運転されており、発車してゆく(自分が乗るはずだった)列車を見送る寅さんの姿が印象に残っている。
越後広瀬を出ると終点はもうすぐだ。会津若松から135.2km、約4時間30分の旅を終え、2両編成の気動車は上越線の接続駅、小出に到着する。
これまでの取材時の思い出を交えつつ只見線全線の風景を紹介したが、いかがだったであろうか。春までは積雪などで運休になりがちな路線ではあるが、このささやかな案内が5月の連休や夏の汽車旅に参考になれば、50年以上只見線を追い続けてきた著者冥利につきる。
