カシオ、「Gショック」の立役者に渡されるバトン 1957年の会社設立以来、樫尾家以外から初の選任

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現在は中国でのGショック人気に依存しない拡販施策を着々と進めている。2022年にはドバイの現地法人が販売地域をアフリカにまで拡大した。これまで手薄であった女性向け時計も着実に売り上げを伸ばしている。欧州ではデジタルマーケティングを強化しており、フランスではカシオ人気が加速している。

一方、テコ入れが必要な事業も残されている。長らく低収益状態が続く楽器事業は、和宏社長の下で製品を絞り込み、演奏アプリのダウンロード数が8万を超えるなど顧客接点の強化も進めてきた。だが、輸送費増加などの影響で2022年度も赤字の見通しだ。

時計事業の経験を「横展開」できるか

カシオは現在、2030年度の企業価値を最大化させることを目的とした「C30プロジェクト」を推進中。これまで各事業が「期初の計画を達成すればいい、の集合体になっていた」と和宏社長は話す。その反省を踏まえ、計画の実行のみに甘んじることなく、市場環境の変化に対応して現場が自発的に動ける体制作りを急ぐ。

そこで、比較的うまく回っている時計事業の経験の横展開を増田氏率いる新体制で狙う。4月以降会長になる和宏社長は、これまで徹底できていなかった全社の管理監督を担う。2022年度の決算発表時には、時計事業の成功事例を軸に、成長事業の収益力の回復と再成長を目指す新中期経営計画を発表する。

Gショックは、高い製造技術と巧みなマーケティングで唯一無二のブランドポジションを作り上げた。増田氏は今後の経営戦略の方向性について、「1つの事業にコアとなるオンリーワンのブランドを築くことが大切だ」と語る。増田氏は時計以外でも手腕を発揮できるか。

吉野 月華 東洋経済 記者

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よしの・つきか / Tsukika Yoshino

精密業界を担当。大学では地理学を専攻し、微地形について研究。大学院ではミャンマーに留学し、土地収用について研究。広島出身のさそり座。夕陽と星空が好き。

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