カシオ、「Gショック」の立役者に渡されるバトン 1957年の会社設立以来、樫尾家以外から初の選任

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この間、アナログ時刻表示の新たなデザインを市場に定着させつつ、世界的なマーケティング戦略で中国を中心とする海外のファンを多く獲得した。増田氏は拡大期にあたる2010年から2015年について、「いちばん強く印象に残っている。事業が大きくなって、社員が活性化した。私も楽しかった」と振り返る。

「時計事業を当社の柱にした専務の経験とノウハウを最大限活かすべきだと考えた」「創業家であるかどうかではなく、目指すべき姿を実現できる人物かどうかで彼を指名した」。和宏社長は増田氏を後任に選任した理由をそう話す。

対する増田氏は、「そこ(創業家ではないということ)よりもむしろ、事業環境の厳しさの中で、会社の価値を最大化することにプレッシャーを感じる」と発言。「会社の成長と社員の成長は一体。だから、絶対にやってのけないと」と力が入る。

遅れるコロナ影響からの回復

現在、時計事業の売上高はカシオ全体の約6割を占める。利益では全社の100%に近い金額を稼ぐ。だが、柱であるこの事業が苦戦している。特に、Gショックファンの多い中国でコロナ影響からの回復が大きく遅れている。

カシオ計算機の業績推移

「競合が絶好調なのに、このままではいけない。中国がコロナで落ち込むなか、ほかの地域も伸ばせなかった」。和宏社長はそのように述べ、苦しい表情をみせる。

競合のセイコーとシチズンは欧米を中心に高価格帯の時計販売が好調だ。しかし、足元ではカシオのみ苦戦している。Gショックファンの多い中国でコロナ影響が長引いていることに加え、いち早く景気後退の影響を受けているからだ。高価格の機械式時計に注力する競合と比べ、カシオは製品単価が安く、景気が顧客の購買意欲に与える影響が大きい。2022年度は時計事業の営業利益が前期比約12%減となる見通し。

とはいえ、コロナ禍の初年度にあたる2020年度において、業績の落ち込みが小さかったのはカシオだ。もともと時計事業の利益率が20%弱と高く、競合が一時的に赤字に沈む中でも利益を確保することができた。

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