東京外大の入試「数学2科目」必須化という大英断 前期の志願者数は前年比74%に減少のインパクト

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かつて国語学の専門家が、「源氏物語の『宇治十帖』は他の源氏物語と比べると読後感が異なる」と述べられたことがある。これに関して、いろいろな品詞の使用頻度を調べると、それらは同一の作者だとする確率は低いとする研究結果がある。また海外では、シェイクスピアの作品には悲劇や喜劇などいろいろあるが、謎に包まれた作者や作品に関して、1語当たりの文字数からの研究などがある。

文章を計量的に分析する研究は、計算機の発達に伴ってますます盛んになっている。最近では、脅迫状の文章分析によって容疑者に迫る捜査もあり、かつてのように筆跡鑑定ではない新たな捜査手法が開発されてきている。文書作成ソフトが普通に使われる現在では、「これらの文章は同一の者が書いたとみなされる」あるいは「これらの文章は複数の者が書いたとみなされる」などの分析結果は有力なのである。

使い方だけではなく背景の理解が重要

そのような学びの基礎として統計学は必須であるが、ここで注意したいことがある。たとえば2つの変量に関する相関係数が1に近い場合、「強い相関がある」と理解している方々は多いが、詳しく述べると、「それら2つの関係は正の傾きの直線的である」ということである。車がブレーキを掛けてから止まるまでの距離は、速度の2乗に比例しているので、相関係数は1とは離れる。だからといって、「それらは関係がない」とは言えないのだ。

このような事例はいろいろあるが、入力方法だけを学んで背景の数学を学ばないと、そのように誤った判断をしてしまうことがある。前出の2月22日の東洋経済オンラインの記事の最後にも紹介したが、いわゆるデータサイエンスの有力な手法である多変量解析に登場する分散共分散行列の固有値というものについても、理解の学びを軽視してはならない。それに関する学びについて、入力方法だけに偏っていることに危惧の念をもつ。

さて、上記で登場した数学用語と現行の高校数学Iの指導要領を比べると、いわゆる(sin、cos、tanなどの)三角比にはまったく触れていない。これに関しても大きな研究テーマを紹介しよう。それは、江戸時代の文化としての「浮世絵」である。いわゆる「顔」について、顔の表面にあるいくつかの点からつくられる角度を計測することから始まる研究である。これに関しても計算機のハード面での発達に支えられていることもあるが、最近では3次元空間におけるベクトルを用いた研究も盛んになっているそうである。

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