「意外なタッグ」東急不動産とJR東日本の思惑 提携により今後5年で1000億円の売り上げ創出めざす

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包括的業務提携を発表したJR東日本の深澤祐二社長(左)と東急不動産ホールディングスの西川弘典社長(右)(記者撮影)

「まさか、JR東日本とタッグを組むとは」。ある大手デベロッパーのベテラン社員は、東急不動産の選択に驚きを隠さない。

東急不動産ホールディングス(HD)は2023年2月14日、東日本旅客鉄道(JR東日本)と包括的業務提携を結ぶと発表した。提携期間は2023年度から2033年度までの10年間。両社は今後5年間で、提携効果により1000億円程度の売り上げを創出する計画だ。

同日行われた会見の席上、東急不動産HDの西川弘典社長は「2022年秋ごろから話し合う機会があり、お互いの目指すビジョンと、リソースの補完性の高さを感じた。非常に高いシナジーとさらなる事業成長が期待できる」と語った。

東急とは「つかず離れず」の関係

協業の領域は、国内外で多岐にわたる。両社は、JR東日本の保有する土地で分譲住宅などの不動産を開発する。まずは、千葉県船橋市市場町で住宅や商業施設などの大型複合開発(敷地面積は約4.5万平方メートル、完成時期は2026年以降)で連携する。また、再生可能エネルギー事業やリゾート事業でも協業するほか、インドネシアでも不動産を共同開発する構えだ。

東急不動産は、1953年に私鉄大手の東京急行電鉄(現、東急)から不動産部門が分離独立し設立された。現在も東急は、東急不動産HDの株式15.9%を保有する大株主だ。ただ、「東急不動産HDは独立心が強く、東急とはつかず離れずの関係にある」(複数の大手デベロッパー関係者)と見られている。

東急グループは大型複合施設「東急歌舞伎町タワー」(東京都新宿区、2023年1月竣工)を筆頭に、東急百貨店・渋谷本店の跡地の大型複合施設「渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト」(東京都渋谷区、2027年度竣工)といった再開発案件を手がけているが、こうした大規模プロジェクトに東急不動産HDは参画していない。一方、東急の競合である私鉄大手の小田急電鉄による「新宿駅西口地区開発」(東京都新宿区、2029年度竣工)には、東急不動産が参画している。

東急不動産HDが東急のライバルであるJR東日本とタッグを結成した背景には、両社が抱える経営課題と危機感がある。

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