ジェームズ・ボンド原作「書き換え」は必要なのか 「現代の感覚」に合わせた再編集版に懸念の声

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007 ジェームズ・ボンド ダニエル・クレイグ
映画で現代風のジェームズ・ボンド役を演じたダニエル・クレイグ(Greg Williams/Getty images)

古典小説の中にある「今にしてみれば失礼な表現」は、書き直されるべきなのか。「ジェームズ・ボンド」のシリーズ小説で知られるイアン・フレミングの作品が再編集されるというニュースに、賛否両論が飛び交う事態となっている。

ジェームズ・ボンドシリーズに先駆けて再編集が発表されたのが、ロアルド・ダールの作品だった。ダールは『チョコレート工場の秘密』(映画『チャーリーとチョコレート工場』の原作)、『おばけ桃の冒険』(アニメーション映画『ジャイアント・ピーチ』の原作)、『マチルダはちいさな大天才』(映画『マチルダ』の原作)などを執筆。

ダールの本を出版するパフィン・ブックスは、今年2月半ば、「現代のすべての人たちに楽しんでもらえるように」との理由で、数々の変更を加えたと発表した。たとえば「fat」(太っている)という言葉は「enormous」(とても大きい)に書き換えられ、「ugly」(醜い)という言葉も削除された。

『おばけ桃の冒険』に出てくる歌の歌詞も、「太った」「やせた」というような体型についての表現を削除すべく、大きく変更されている。精神の病を抱える人々に配慮して、「crazy」(狂った)という言葉も削除したとのことだ。

ただし書きはあるが…

それから1週間後、今度はフレミングが書いたジェームズ・ボンドのシリーズ小説に対しても同様のことがなされていると判明。シリーズ第1作『カジノ・ロワイヤル』の発売から70年の節目を迎えることを記念し、現代の感覚に合わせて再編集されたバージョンが新たに出版されるのだという。

その過程では、オリジナルにあった人種差別的な表現などが削除されたそうだ。新たなバージョンの本には、「この本が書かれたのは、今日の読者を不快にさせるかもしれない言葉遣いや態度がよく見られる時代でした。できるだけオリジナルから離れないよう注意しつつ、このバージョンではいくつかのアップデートがなされています」というだたし書きが入るらしい。

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