浅草乗り入れをめぐる「東武と京成」の悪戦苦闘 両国が今より栄えていた墨田区・江東区の旅

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現在、幾多もの系統のバスが発着する錦糸町は、かつて6系統もの都電が見られる下町の要所であった。もともと城東電気軌道を起源とする系統と、東京市によって開通された運行系統があったが、東京市に吸収後、数度に渡り系統が見直され、戦後の最盛期は16番系統・大塚駅前―錦糸町駅間、25番系統・西荒川―日比谷間、28番系統・錦糸町駅前―都庁前間、29番系統・葛西橋―須田町間、36番系統・錦糸町駅―築地間、38番系統・錦糸堀車庫前―日本橋間の各系統が運行されていた。

このうち16番系統のみ、国鉄総武線を挟んだ、錦糸公園寄りにある電停を発着しており、轍はつながっておらず、大塚電車営業所が受け持っていた。残りの5系統は全て錦糸町駅前に停車場を構え、錦糸堀電車営業所が担当していた。

車体延長などの改造により誕生した1300形と1500形は、この営業所のみに配置されていた形式で、営業所を象徴する車両になっていた。また、ひとつの営業所で5系統もの運行を担っていたのはここだけであり、都心部は日本橋や日比谷などにまで顔を出していた。

錦糸堀の営業所にある車庫だけでは車両の収容能力などに限界があり、29番系統を明治通りと清洲橋通りの交差点付近にあった錦糸堀電車営業所・境川派出所で運行管理をしていた。1957年に開設された新しい車庫で24両程度収容出来る車庫を備えていたが、車両の検査や修繕などは錦糸堀電車営業所でおこなっていた。25番系統、36番系統の廃止などで錦糸堀電車営業所の収容能力に余裕が生まれると、ひと足早い1971年に廃止され、わずか14年で幕を下ろすことになった。

境川派出所廃止後も運行継続された29番系統は、錦糸堀電車営業所の直轄となったが、一年後に廃止となった。このほか江東区内に柳島電車営業所があり、23番系統・福神橋―月島間、24番系統・福神橋―須田町間、30番系統・東向島三丁目―須田町間を担当しており、錦糸堀電車営業所と共に多くの利用者の足となっていた。

0メートル地帯では、都電が水面ぎりぎりの鉄橋を越える姿を見ることが出来たが、1972年の最終撤去で、錦糸堀電車営業所と柳島電車営業所が運命を共にした。

越中島支線

総武線に乗車していると、平井―亀戸間でオーバークロスして京葉道路方向へ分岐して行く路線がある。これは総武本線の支線であり、通称・越中島支線と言われている路線だ。小岩を起点として、越中島貨物駅までを結ぶ路線で、越中島貨物駅からは、中央区編で紹介した東京都港湾局の専用線に繋がり、晴海や豊洲埠頭などへ貨物輸送を行っていた。

小岩を起点にしていることに不思議な気がするだろう。開業時は亀戸を起点としていたが、後に新小岩操車場に変更し、さらにJR移行を踏まえた1年前にJR東日本は小岩、JR貨物は新小岩操車場に変更した経緯があるからだ。

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