ウイグル人監視カメラに「日本企業の部品」の衝撃 使用が判明したのは7社、人権侵害加担のおそれも

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日本企業の対応の鈍さは、法整備の遅れとも関係がある。日本ウイグル協会などの調査結果への受け止めを聞かれた高市早苗経済安保担当相は2月3日の記者会見で、「日本の輸出貿易管理令では、アメリカのエンティティリストのように特定の企業を名指しして、ここに対しては製品を出さないといった法律の建て付けになっていない」と答えている。

他方、アメリカでは商務省が2019年10月に輸出管理規則に基づくエンティティリストにハイクビジョンを追加し、アメリカ製品の輸出を許可制にすることで、事実上の禁輸措置を講じている。その際に商務省は「新疆ウイグル自治区での人権侵害」を理由に挙げている。

日本の規定は「ガイドライン」止まり

フランスやドイツなどヨーロッパの主要国は人権デューデリジェンスの法制化を推進。域内でビジネス展開する大手企業などに実施を義務付けている。2021年9月にはヨーロッパ連合(EU)で新しい輸出管理規則が施行され、軍事利用される可能性のある民生品の輸出管理が強化されている。

日本では2022年9月に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が制定し、人権デューデリジェンスの実施のみならず、説明や情報開示の必要性についても定められている。同ガイドラインではそのことについて次のように述べている。

「企業が人権侵害の主張に直面した場合、中でも負の影響を受けるステークホルダーから懸念を表明された場合には特に、その企業が講じた措置を説明することができることは不可欠である」

ただ、ガイドラインにとどまっていることもあり、多くの企業は「個別の取引であること」を理由に、情報開示に消極的な姿勢を示している。

このままでは、日本企業の取引が人権侵害を助長しかねない。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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