エンジニアを「絶望させる」文系管理職のNG行動 その「地雷」を無神経に踏み続けるとどうなるか

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NG4:学習する気がない

専門用語や難解なテクノロジーについての理解は、エンジニアの領分だと割り切っている人がいるかもしれない。間違いではないが、だからといって、「マニュアルや資料を読まない」「同じことを何度も聞く」。これをやられると、相手は幻滅してしまう。

はなから「学習する気がない」という態度は、存外強烈な悪印象を与えるのだ。新人のとき、同じ質問をしないために、先輩から「メモを取れ」と言われた人も多いだろう。

さらに程度を見誤ると、管理職としての資質すら疑われてしまう。場面によっては、クライアントからもだ。例えば「クラウド」という言葉は、今やエンジニアでなくても、雰囲気だけでも理解しておくべきキーワードだ。「知らん」と偉そうに開き直れば、もはや相手に引かれてしまう。

まずは、何も覚える必要がないという認識を改めよう。プロジェクトで飛び交っている用語やシステムの概要は、打ち合わせやプレゼンテーションに支障がないレベルで理解しておきたい。

共通の知識が増えれば、意思疎通もスムーズになる。わからないことは教えてもらい、聞いたらメモをしよう。「クラウド」のような一般的な言葉なら、自分でネット検索をして調べるのもお勧めだ。

NG5:味方になってくれない

最後は、信頼関係を築くうえで、とくに注意してほしいNG行動だ。

具体的には、「クライアントの要求を押し付ける」「不具合を頭ごなしに責める」「何かあったときにかばわない」など、「味方になってくれない」ことで失望させる振る舞いだ。

これらは、IT業界の事情を知らないと、思いのほかやってしまいがちだ。エンジニアの主張が、甘えや言い訳に聞こえることがあるからだ。

例えば宿泊中のホテルが停電したとする。フロントに尋ねると落雷が原因だと言われた。それは仕方がないと思うはずだ。しかしIT業界では、この落雷に該当するような事情を説明しても、相手が詳しくないと納得してもらえない。

エンジニアは、自分たちがそういった無理解に囲まれていることを知ってはいる。だからといって、身内である管理職にすら理解してもらえないとしたら、それはやりきれない。

ITプロジェクトは、すべてのフェーズで不測の事態と隣り合わせだ。エンジニアは、それらを回避しようとし、時には失敗もする。クライアントの要求と衝突することもある。そんな彼らの背景について、コミュニケーションを重ねて知ってもらいたい。

最初は理解できないかもしれない。だとしても、どうか彼らの味方でいてほしい。

黒音 こなみ システムエンジニア・作家

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くろね・こなみ

ソフトウェア開発に従事し、2019年から執筆活動を開始。FMラジオ番組「IT正常運用促進課」構成作家。技術同人誌サークル主宰者。著書に『IT素人を説得する技術』。

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