同性婚に慎重な岸田首相が「LGBT法」成立は急ぐ訳 自民党の保守派は反発、政局の新たな火種

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ここにきて岸田首相は周辺に「今は理解増進法案以上のことをやるつもりはない。何事も段階的にやらないと党内が持たない」と漏らしているとされる。松野博一官房長官も「社会全体に影響を与えうる問題」と慎重姿勢を繰り返す。

党内論議を仕切る立場の萩生田政調会長も、12日のNHK番組で、「差別は許されない」などの理解増進法案の文言について「どういう書きぶりであれば、みなさんが理解していただけるのか。党内のコンセンサス(合意)をしっかり得ていきたい」と文言修正もありうるとの考えを示唆した。

安倍氏側近で安倍派の後継者を狙っているとされる萩生田氏だけに、周辺には「今は野党やマスコミが盛り上がっているので、少し冷却期間を置く。結論を急がずよく検討したい」と漏らしているとされる。

したたかな岸田流作戦?

これに対し、岸田首相サイドは「多くの世論調査でも、圧倒的多数の支持がある。強硬な反対論者も自分の存在が目立てば次の選挙で不利になると考え、徹底抗戦は避けるはず」と、当初の思惑どおりの理解増進法の早期成立に期待と自信をにじませる。

このため、党内でも一連の動きについて「自らへの批判は回避しつつ、世論の追い風を利用して党内保守派を抑え込むしたたかな岸田流作戦」(自民長老)との見方が広がる。

ただ、統一地方選で自民退潮が際立てば「それどころでなくなる」(同)のは確実。それだけに、岸田首相にとっても「“作戦”の成否は、風任せというその日暮らしの状況」(閣僚経験者)が続くのは間違いなさそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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